ワイヤレスジャパン2015事前特集インテルのNFV戦略「オープン化によって柔軟なプラットフォームを作る」

インテルが、NFV事業の取り組みを戦略的に強化している。通信業界は歴史的転換期に入っており、なかでもNFVの導入によって通信ネットワークは一変するといわれている。IT業界を牽引してきたインテルは「SDI構想」を掲げ、この大変革をリードする意気込みだ。データセンター事業開発部でビジネス・デベロップメント・マネージャーを務める田代淳一氏に、インテルの取り組みと狙いを聞いた。

テクノロジ開発とオープン化の両面でリード

では、NFVを活用して通信ネットワークを革新するため、インテルはどのような取り組みを進めているのか。

NFVを実現するための鍵は、(1)ネットワーク機器におけるハードウェアとソフトウェアの分離、そして(2)それらを用いてオープンなプラットフォームを構築することの2つだ。インテルはこの2点において重要な役割を担おうとしているのだ。

まず、ハードウェアとソフトウェアの分離であるが、ここでの最大の課題は、パフォーマンスにある。これまで専用ハードウェアで構築されてきたネットワークインフラを単純に汎用ハードウェアとソフトウェア群に置き換えただけでは、必要とされる性能は出せない。この問題に対してインテルは、汎用サーバーで構築された仮想化基盤上でキャリアグレードのパフォーマンスを実現するための様々な技術を開発し一般に提供している。「例えば、アクセラレーション機能を組み込んだチップセットの提供や、ソフトウェア開発者向けに性能向上のベスト・プラクティスを取り入れたソフトウェア・ライブラリーの提供などを行っている。」(田代氏)。

一例が、「Intel DPDK(Data Plane Development Kit)」の仕組みだ。ネットワーク処理を効率化したアプリケーションを開発するためのソフトウェアライブラリセットであり、インテルのマルチコアプロセッサー上でパケット処理能力を大きく向上させることができるものである。Intel DPDKはオープンソースとして無償で利用できる。このほか、各種のネットワーク仮想化プロトコルに対応したイーサネットカードの提供や、ネットワークの低遅延化の要求に応える新技術の開発など、多方面で取り組みを続けている。モバイルネットワークとアプリケーションの利用形態は日々進化しており、それを下支えするプラットフォームに対する要求も実にさまざまだ。例えば、低遅延なネットワークを作るためには、ユーザに近いネットワーク・エッジにインテリジェントな機能を実装する技術が求められる。また、スマートフォンユーザーが密集した環境で大容量の動画コンテンツをストレスなく活用するには、高効率なデータ配信技術が不可欠になる。「そうした新たな要求に応えるためのシステム・アーキテクチャの提案やプロトタイプの開発にも力を入れている」と田代氏は話す。

2つめは、オープン・プラットフォームを実現する活動だ。

田代氏は、「開発したテクノロジーは基本的に、多くの人に使っていただくためにオープンにしている。通信機器ベンダーをはじめとするエコパートナーと協業してテクノロジーを製品化し、普及させていくことが、我々の戦略の柱です」と話す。

図表2に示す通り、インテルは、NFVおよびSDN(Software-Defined Networking)に関わる各種の団体に参加あるいは連携し、標準化活動などに積極的に関わっている。NFVを主導するETSIやIETFはもちろん、OpneStack、ceph、OpenDaylight、Open Networking Foundation(ONF)、Open vSwitchとともに技術開発・標準化を推進。また、前述のIntel DPDKもDPDK.orgとして公開している。また、ETSIのNFVアーキテクチャーへのインテルのNFVへの貢献は大きい。(図表3)

図表2 オープン化/標準化に向けたインテルの取り組み
オープン化/標準化に向けたインテルの取り組み
図表3 ETSIのNFVアーキテクチャーとインテルの貢献
ETSIのNFVアーキテクチャーとインテルの貢献

ベンダーに対してはCPU等のハードウェアを提供するだけでなく、リファレンスデザイン(参照設計)を提供し、製品開発を支援することでエコシステムを構築しようとしている。これは、既存の通信機器ベンダーのソリューション開発をサポートするだけでなく、新規参入メーカーを呼びこみ、技術革新や競争によるコスト削減を促進することにもつながる。

IoTビジネス活発化の後押しにも

こうした取り組みによってプラットフォームを共通化することにより、通信事業者や企業は具体的にはどのようなメリットを得られるのか。

田代氏は、サービス例の一つとして、IoT(Internet of Things)ビジネスの例を紹介する。

IoTでは、ネットワークに接続された多数のセンサー/デバイスから情報を吸い上げ、分析や制御に活用することが期待されているが、従来、そのような仕組みを開発・構築するには多大なコストがかかっていた。しかし、「例えば、通信事業者のデータセンター内にあるリソースから必要な分をIoTサービス用に割り当てられるようになれば、迅速かつ容易にインフラを調達してサービスを提供できる。誰でも、共通化されたプラットフォームを使って新たなビジネスをスピーディに始められるようになります」という。

モバイル/ワイヤレスを活用した新しいビジネスを次々と生み出し、発展させるための基盤となるのだ。

同氏によれば、このような取り組みは、すでに国内外のさまざまな場所で進められているという。
インテルは、5月27日に東京ビッグサイトで開催される「ワイヤレスジャパン2015」の基調講演に登壇し、NFVを核にした通信ネットワーク革新に向けた最新の取り組みについて事例を交えて解説する予定になっている。

★5月27日から3日間、東京ビッグサイトで開催する「ワイヤレスジャパン2015」の基調講演「モバイルテクノロジー&ビジネスコンファレンス」で常務執行役員 ビジネス・デベロップメントの平野 浩介 氏が登壇します。

★お申し込みはこちらから → http://www8.ric.co.jp/expo/wj/conference.html#X

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