――通信インフラ部門の売上額で、エリクソンを抜き世界トップに立ったといわれています。
周 ファーウェイが手掛けている通信インフラ、端末、企業向けソリューションの3事業の売上合計では、2013年にエリクソンを超えています。
2014年の売上はさらに20.6%増えて465億ドル(約5兆5507億円)になっています。通信インフラ部門も16%伸び310億ドル(約3兆6,998億円)となり、エリクソンの売上273.6億ドルを上回りました。
もっとも当社の売上構成は、モバイルインフラを主力としているエリクソンとはかなり異なっていて、モバイル分野から光伝送装置、固定通信向けのIP関連製品まで幅広いソリューションを手掛けています。これが売上の拡大に大きく寄与しているのです。
――通信インフラ事業に今後どのように取り組んでいくのですか。
周 ファーウェイでは大きく3つの取り組みを進めていこうとしています。
1つは、「パイプ戦略」の推進です。パイプ戦略というのは、通信事業者のネットワークを単なるデータではなく「情報」をやり取りする「パイプ」として捉え、それに必要なソリューションを、コンテンツを除いて全てエンド・ツー・エンドで提供できるようにしていくというものです。我々のコア戦略と言えるもので、これを推進することで通信事業者のビジネスの発展に貢献していけると考えています。
2番目が、社内のマネジメントをシンプルで効率的なものにして、お客様のために新しい価値を創りだしていくことです。
最後がR&Dの推進で今後も継続的に投資をしていくことです。2015年の研究開発予算は前年比3割増の66億ドルで、売上の14%を占めています。ブロードバンド、クラウドコンピューティング、ビッグデータ、IoTなどに代表される新しいICT技術への投資を強化していこうとしているのです。これらのテーマはパイプ戦略の新たな柱でもあります。
5Gの技術を前倒しで導入
――日本でも4G(第4世代移動通信システム)の展開が本格化してきました。4Gにはどのように取り組んでいくのですか。
周 4Gにはいくつか定義がありますが、当社では3GPPで標準化されたLTE-Advancedの要素技術によってLTEを拡張した移動通信システムを4Gと考えています。これらの要素技術の中でも、特にキャリアアグリゲーション(CA)の技術開発に力を入れており、高い評価を得ています。
今年春には香港テレコム(HKT)と協力して3つの異なる周波数帯の電波をCAで組み合わせて利用するトライアルを実施し、450Mbpsのピークデータレートを実現しました。既存の携帯電話の周波数帯で広く使われているFDD方式と日本でも3.5GHz帯に導入されるTDD方式をCAで組み合わせる取り組みも行っています。CAは4G、さらにその次の5G(第5世代移動通信システム)を支える重要な技術になると考えています。
当社ではCA以外のLTE-Advancedの技術開発にも広く取り組んでいますが、さらに今年「4.5G」というコンセプトを新たに打ち出しました。
これは5Gで導入が想定されている次世代の技術を前倒しで使っていこうというものです。名称は固まっていなくて「4.9G」が良いのではないかという意見もあります。当社ではこれらの技術開発を進めると同時に、標準化に向けた関係機関との調整も行っています。
――4.5Gにはどのような技術が用いられるのですか。
周 重要なものの1つに、強い指向性を持つ多数のアンテナを利用して効率的な通信を実現するマッシブMIMOなどの「マルチアンテナ技術」があります。5Gでは新しいエアインターフェース(無線伝送方式)とマルチアンテナ技術を組みわせて高速・大容量の無線通信を実現することが想定されているのですが、マルチアンテナ技術はエアインターフェースを新しくしなくても利用できます。そこでその開発を前倒ししてLTE-Advancedの規格にこれを盛り込もうとしているのです。
もう1つ我々が重要だと考えているのがIoT/M2Mへの対応です。これはファーウェイが開発を進めている省電力型チップセットやLTE-Advancedの拡張技術として標準化が進められている「LTE-M」によって実現されるものです。LTE-MはLTEの搬送波の幅を狭め、通信量の少ない多数の端末が接続しやすくしたM2M向けのエアインターフェースです。現行のLTE/LTE-Advancedと互換性が保たれているため、新たにネットワークを整備しなくても導入できる点が大きなメリットになります。
加えて、ネットワークアーキテクチャーをフラット化し遅延を低減することも、4.5Gの重要なファクターになると考えています。(図表1)
図表1 4Gと5Gの関連 |