加藤電機は2015年2月26日、920MHz帯の特定省電力無線を使った「SANフラワー見守りサービス」を発表した。
愛知県半田市に本社を置く同社は、カーセキュリティ機器などの開発・製造・販売を行う企業。記者会見には、SANフラワーのサポーター企業であるアキレス、イエローハット、オートバックスセブン、KDDI、日本大学、知多信用金庫も参列した。
SANフラワー見守りサービスの概要 |
SANフラワー見守りサービスは、認知症の高齢者の徘徊問題、子供の連れ去り対策、災害時の人命救助などに活用できるサービスだ。GPSを利用せず、より正確に居場所を捜索できるのが特徴だという。
これまでも加藤電機は、自動車盗難対策や児童見守りのための位置検索サービスを、GPSやPHSを利用して提供してきた。それが今回、920MHz帯の特定小電力無線を採用したのは、次の理由からだと代表取締役社長の加藤学氏は説明した。
まずは精度。「GPSは10mほどの誤差がある。また、GPSは屋外で使うためのもので、GPS衛星の電波を受信できない建物の中では、全然違う場所が表示される」。PHSの基地局を使った位置検索も、「当社の特許技術を使っても70m程度の誤差が出てしまう」という。
さらに、GPSやPHSなどでは、バッテリー持続時間や通信事業者に毎月支払う月額利用料も課題となる。
SANフラワー見守りサービスの仕組みとは?
では、920MHz帯の特定小電力無線を使ったSANフラワー見守りサービスは、どういった仕組みで位置検索をするのだろうか。
SANフラワー見守りサービスの仕組み |
まず見守り対象の人やモノは、SANタグを携行・装着する必要がある。加藤電機ではアキレスと協力し、SANタグを収納するポケット付きの靴の開発も進めている。
SANタグの色見本。サイズは約48×37×10mmで重さは約15g | 開発中のSANタグ対応シューズ |
SANタグは15秒間に1回、電波を発信し、SANアンテナに位置情報を送信する。SANアンテナには、800MHz帯のモバイル通信機能も搭載されており、KDDIのモバイル網経由でSANタグから受信した位置情報をクラウド上のサーバーに送信・蓄積する。
SANアンテナの概要 |
SANタグの通信可能距離は、住宅街などの見通し外通信で数百m、障害物のない見通し内通信で最大4kmだという。このため、例えば会見が行われた東京都港区全体をカバーするには、「SANアンテナが50本もあれば十分」と加藤氏。SANアンテナは、モバイルWi-Fiルーター程度のサイズの通信機器で、電源を挿すだけで容易に設置可能だ。
こうしてSANタグの位置情報がクラウド上のサーバーに送信され、スマートフォンやPCなどからSANタグの現在地を確認できるのである。
SANタグとSANレーダーの特徴 |
ただし、ここまでの仕組みでは、SANタグの大体の場所までしか分からない。そこで登場するのがSANレーダーだ。
SANタグから発せられる電波の強度から、目的のSANタグまでの距離と方向を表示するのがSANレーダーの役割。後述する「SAN見守り隊」がSANレーダーを持って現地に向かい、SANタグのより正確な場所を探り出す。会見では、加藤氏がSANレーダーを使って、SANタグを隠し持った記者を見つけるデモも披露された。