沼田町の成果をモデルケースに
山梨・静岡エリアには、富士急ハイランドなどのテーマパークや、富士スピードウェイをはじめとするサーキット場がある。これらの施設からは、「カメラで撮影した映像を解析し、施設内の混雑状況をリアルタイムに把握・可視化したい」「テレビ局のスタッフが撮影した映像をYouTube等に配信したい」といったニーズがあるという。こうした取り組みを支える基盤として、26GHz帯の活用を見込む。
その他の地域でも、防犯・防災目的に加え、空港や観光施設など、観光客が集中するエリアの通信環境を改善したいという引き合いが寄せられているそうで、こうした要望にも26GHz帯を活用して応えていきたい考えだ。
ハイテクインターでは、2026年度中に沼田町で実証を開始する計画だ。同町には同社の実証施設「北海道開発テストセンター」があり、「沼田町の成果をモデルケースにしたい」と旦尾氏は述べたうえで、「年度内にもう1カ所で実証をスタートさせたい」と語る。
また、26GHz帯に対応した産業用5Gルーターをラインナップに加える準備も進めており、年内に商用化する予定だ。今年3月には、ミリ波基地局などを開発するポーランドのマイクロアンプ社との協業も発表している。「自社で開発するか、他社製品を取り扱うかは検討中だが、ミリ波対応端末や基地局などを自分たちで揃え、地方自治体や地元企業に展開していきたい」と旦尾氏は意気込む。
JTOWERは周波数共用目指す
ハイテクインターと同じく地域枠を落札したJTOWERは、基地局やアンテナに加え、周波数までを共用する「MOCN」(Multi-Operator Core Network)の本格普及を見据える。
2026年8月21日に開催された戦略発表会にて、代表取締役社長の田中敦史氏は、「人が多く集まる場所では、通信トラフィックをSub6だけで捌き切れないケースがある。その対策としてミリ波の活用が不可欠だ」と話し、各通信事業者が個別にミリ波を整備するのと並行して、26GHz帯などのミリ波のシェアリングも今後ますます重要になると強調した。

JTOWER 代表取締役社長 田中敦史氏
JTOWERが手掛けるインフラシェアリングは、通信事業者が個別に整備していたネットワーク設備の一部をJTOWERが整備・運用し、複数の通信事業者が共用する仕組みだ。
国内では、鉄塔やアンテナに加え、電波を光ファイバー等を介して建物内の各アンテナへ分配する中継装置のシェアリングなどが一般的に行われている。欧州等で進むRU(無線部)の共用についても、JTOWERは現在、国内の通信事業者と本導入に向けた実証に取り組んでいるという。
さらにその先にあるのが、MOCNだ。共用する領域が広がるほど技術的な難易度は高まるが、より効率的な設備運用が可能になる(図表4)。「インフラシェアリングの行き着く先は周波数共用だ」と田中氏は述べ、通信事業者との調整やミリ波対応端末の普及状況などを踏まえながら、5~10年という中長期的なスパンでMOCNの本格展開を目指す考えを示した。
図表4 インフラシェアリングの領域

ミリ波がフィジカルAIを支える
同社が落札したのは、北海道千歳市、千葉2地域(千葉市、浦安市)、東京都特別区(23区)、神奈川・横浜市、愛知・名古屋市、大阪4地域(大阪市、泉佐野市、泉南市、泉南郡田尻町)、兵庫・宝塚市、福岡・福岡市、熊本・菊池郡菊陽町の計13地域。田中氏によれば、県庁所在地など人口が多い地域や、すでに屋内インフラシェアリングを導入している施設があるエリアを中心に選定した。
また、泉佐野市・泉南市・田尻町には関西国際空港、浦安市には東京ディズニーリゾート、宝塚市には阪神競馬場など、人が密集する施設があるほか、千歳市には半導体メーカーのラピダス、菊陽町にはTSMCの半導体製造拠点がある。「まずはイベント会場などに来場者が集中した際の混雑対策としてミリ波を活用する。将来的にフィジカルAIのニーズが高まれば、それを支える通信基盤としてミリ波を役立てていく」(田中氏)
3社の取り組みは緒に就いたばかりだが、今後26GHz帯をはじめとするミリ波はどこまで活躍の場を広げていくのか。その行方に注目したい。
[月刊テレコミュニケーション 2026年10月号の記事を再構成]











