ブロケード コミュニケーションズ システムズは現在、“The New IP”というメッセージを掲げて、モバイル/クラウド時代、あるいはSDN/NFV時代のネットワークに取り組んでいる。
従来のレガシーIPネットワークが、モバイル/クラウドの時代を迎えて、様々な課題に直面していることは、SDNやNFVなどの議論でも明らかだ。そこで従来型ネットワークの課題を乗り越えるべく、ネットワーク業界では様々な動きが起こっている。そのためブロケードのThe New IPというメッセージは、ともすれば当たり前のように聞こえるが、米本社CEOのロイド・カーニー氏のこの日の発言からは、ブロケードが目指すThe New IP時代とは、現在の我々の常識からすると予想以上に新しい世界であることが窺えた。
The New IPのイメージスライド。ここに登場するハードウェアはインテルのチップだけ。あとは、OpenDaylightやOpenStackなど、オープンなネットワーク関連の取り組みで構成される |
「シスコはThe New IPの時代のリーダーにはなれない」
ブロケードのThe New IPへの取り組みを象徴するのはVyattaだ。インテルのx86アーキテクチャ上で稼働する仮想ルーターである。
Vyattaのような仮想ネットワークアプライアンスは、シスコやジュニパーなども発表しているが、「これまで市場をリードしてきたシスコのような会社は、The New IPの時代のリーダーシップは獲れないだろう。従来のルーターやスイッチを売り続けなければならないからだ」とカーニー氏は指摘した。
従来、ハードウェアベースで実現されてきたネットワーク機能が、ソフトウェアベースに移行すれば、既存のネットワーク機器ベンダーは大きな打撃を受ける。そこで、新興のSDN/NFVベンダーを除けば、ほとんどのネットワーク機器ベンダーが、ハードウェアベースとソフトウェアベースが併存する将来ビジョンを描いている。
こうした事情はブロケードにとっても変わらないはずだが、カーニー氏はx86アーキテクチャの方向へと大きく舵を切る覚悟をすでに決めているようだ。
「Vyattaは私の直属のチームにしているが、これには理由がある。やはり従来のルーターやスイッチのチームは、今の売上を維持したいからだ。競合他社の場合、どうしても従来のハードウェアの売上を気にせざるを得ないだろうが、私はThe New IPがブロケードのビジネスをさらに高めていくと考えている」
ブロケードが考えるThe New IPのフレームワーク |
もちろん、カーニー氏は、すべてのネットワーク機能がx86ベースに移行していくと考えているわけではない。The New IP時代のネットワークの姿を説明するのに、同氏がたとえに使ったのはデジタルカメラ市場で起こった変化だ。
「(スマートフォンの普及によって)ローエンド、ミッドレンジのカメラ市場はなくなった。これと同じことがネットワークでも起こる。ローエンドとミッドレンジのネットワーク機器はなくなっていくだろう」。一部のハイエンドのネットワーク機器を除き、ほとんどがx86ベースになっていくというのが、ブロケードの予想だ。
大手通信事業者のテレフォニカは、Vyattaを使ったテストで、80Gb/sのベンチマークを達成している。「1Uのインテルサーバーで、80Gb/sというのは非常に強力だ。インテルのチップのパケットフォワーディング能力は、徐々に向上している。インテルほどチップの開発に投資している企業はない」(カーニー氏)。x86ベースで十分なパフォーマンスが得られる領域は、今後どんどん拡大していく。