「世界を変えた10のモバイルアプリ」に企業が学ぶべきこと(前編)はこちら
<6>Nest――コントロールをヒトに渡す
ガートナー バイスプレジデントのイアン・フィンリー氏が挙げた6番目の世界を変えているモバイルアプリは、グーグルが32億ドルで買収して大きな話題を呼んだNestである。
Nest社は、家屋の温度調整を行うサーモスタットのメーカーだが、「グーグルがこれだけの金額を投じてNestを買収したのは、サーモスタットのためだけではない」。
Nestが描くのは、サーモスタットがハブとなり、モバイルアプリをコントロールパネルに家屋内のいろいろな機器の制御が行える世界だ。「テレビや冷蔵庫などの機器それぞれがタッチスクリーンを持つのではなく、モバイルデバイスから家の中をリモートコントロールする」。グーグルが買収したのは単なるサーモスタットメーカーではなく、高い将来性を持ったIoTベンダーである。
Nestから学べる秘訣は、モバイルデバイスこそが「モノのインターネットの顔になる」ということ。「人々の手元には何があるのか。それはモバイルデバイスだ。モバイルデバイスが、すべてのリモートコントロールの起点となる」
<7>Uber――市場を破壊する
Uberは、ハイヤーやタクシーをスマートフォンから呼べる配車サービスのモバイルアプリだ。Uberが世界的に話題を集めているのは、その利便性からだけではない。タクシー業界を“破壊する”として、そのビジネスモデルにも大きな注目が集まっている。
Uberのビジネスモデルの特徴は、Uber社自体は1台の車も1人のドライバーも有していないことだ。Uberが提供しているのは、ハイヤーやタクシーを使いたいユーザーと契約ドライバーをつなぐ仲介サービスだからである。
従来のビジネスモデルを破壊しかねないと、タクシー業界はUberに大反発。Uberに反対するタクシー運転者などによるデモも世界各地で行われている。また、タクシーに関しては多くの規制があり、Uberはこれに抵触するため、政府とも対立している。
フィンリー氏がUberから引き出す教訓は、「人より先に市場を破壊すること」の大切さだ。
ホテルの空き部屋を集約・ディスカウントして提供するHotelTonight、本棚全部をスマートデバイスの中に持ち歩くことを可能にしたKindle――。従来の非効率なプロセスを作り直すモバイルアプリをいち早く提供することで、一歩先に市場を破壊することができる。