
総務省 総合通信基盤局 電波部 移動通信課長 五十嵐大和氏
——移動通信課というと、携帯電話の免許や利用促進の担当部署というイメージが強いかと思いますが、携帯電話だけでなく、幅広い無線通信を所管されていますね。
五十嵐 無線通信の本質的な価値は「動き回れる」ことにあると思いますが、移動通信課では陸上を動き回るものに使われる無線通信全般を担当しています。具体的には、携帯電話のほか、業務用無線やアマチュア無線、ワイヤレスマイクなどが含まれます。
こうした無線通信において新しいテクノロジーなどが登場した際、「どのようなルールで利用可能にすれば、皆にとって望ましいのか」——。我々の重要な仕事は、周波数割当や電波出力制限等の技術基準の形で、無線システム全体の健全性を担保していくことです。
例えば、あるシステムの電波出力を上げれば、そのシステムは使いやすくなるかもしれません。しかし、他のシステムへの影響が大きくなり、全体のバランスが崩れてしまいます。
鉄道無線が利用しやすく
——無線通信が我々の生活・経済にますます欠かせなくなる中、全体のバランスを担保することの重要性も一層増していると思いますが、業務系や自営系の周波数や技術基準の見直しが最近相次いでいますね。
五十嵐 まずは「433MHz帯タイヤ空気圧モニタリングシステム(TPMS)及びリモートキーレスエントリ(RKE)」です。自動車のドアロックをリモートで開閉するRKEとは異なり、日本ではTPMSの普及は高級車などに現状限られていますが、米国や欧州では義務化されています。
日本と米国は従来、TPMS/RKEに315MHz帯を利用してきました。しかし、欧州をはじめ海外では433MHz帯が主流で、米国は433MHz帯も使えるようにしています。そこで国際的な周波数協調を図るため、日本でも2025年2月に433MHz帯TPMS/RKEを制度化しました。これまでの315MHz帯も引き続き利用可能です。さらに、433MHz帯の帯域幅は従来の250kHzから1740kHzに拡大します。昨年、米国で製造・認証された乗用車を、追加試験なしで日本国内で販売可能にするという共同声明の発表がありました。これにより米国生産車の輸入が増えると考えられるため、可能な範囲で利便性や経済性も確保したいと考えました。
——433MHz帯はアマチュア無線に利用されている周波数ですが、共用を懸念する声もあったのではないですか。
五十嵐 はい。寄せられたご懸念の中には「アマチュア無線の方が一般に出力が大きいので、干渉を与えてしまい、自動車のドアが解錠できず、思わぬ事故につながらないか」といったものがありました。しかし、433MHz帯はアマチュア無線が一次業務として優先される周波数であり、電波のルールでいえば、有害な混信を避ける義務は自動車側にあります。
——干渉対策は自動車側の責務なのですね。鉄道分野でも新たな制度化がありました。
五十嵐 2026年2月に、「43GHz帯鉄道用無線通信システム」の技術基準を策定しました。
現在、鉄道業界ではワンマン運転の導入が広がっています。車掌が不在となるため、運転士が運転席にいながらホームの安全確認やドアの開閉操作を行う必要があります。そのため鉄道事業者の中には、監視カメラの映像を運転席に伝送する「ホーム画像伝送システム」を独自に導入し、個別に無線局免許を取って運用してきた事業者もあります。今後、他の鉄道事業者でも需要が高まると見られることから、今回制度化しました。
これにより、43GHz帯鉄道用無線通信システムの技術基準適合証明(技適)を取得した機器を用いることで、簡単な手続きで導入が可能になります。あわせて、線路上の基地局と車両間で車内映像や設備情報をやり取りする「列車無線システム」も制度化しました。












