総務省 移動通信課長 五十嵐氏「自動車・鉄道・電力伝送など、新たな電波利用へ制度整備」

陸上の移動無線通信全般を所管する総務省の移動通信課——。自動車のリモートキーレスエントリ等の国際協調、鉄道ワンマン運転を支えるミリ波無線、MCA跡地の800MHz帯・900MHz帯の活用、ワイヤレス電力伝送の屋外利用など、携帯電話に限らず、多方面で制度整備が相次いでいる。その最前線を五十嵐移動通信課長に聞いた。

電波の価値を下げないために

——電波を最大限に活用していくため、様々な取り組みが進んでいるのですね。

五十嵐 出力に制限があったり、免許が必要なシステムがあったり、電波利用には何かと制約が多いと感じられている方は少なくないかと思います。

しかし、大声を出せばその人の声は伝わりやすくなりますけれども、周囲の人は会話しづらくなってしまうのと同じように、電波の出力や時間、占有周波数帯幅などを必要最小限にしないと、他の通信に無用な影響を与えてしまい、結果的に電波を有効に使えなくなってしまいます。

また、電波は、届いてほしいところできれいに消えるわけではありません。1kmの通信エリアを確保するための出力は、1.5km先にも影響を及ぼす可能性があります。電波という物理現象を有効利用するためには、制約があることをご理解いただければと思います。

総務省 総合通信基盤局 電波部 移動通信課長 五十嵐大和氏

——電波は見えるわけでも、音のように聞こえるわけでもないので、一般の人にはなかなか理解しにくいですね。

五十嵐 それは我々の努力不足のせいでもあり、周知活動にさらに力を入れていきたいと考えています。

人類が電磁波を発見してから、まだ百数十年です。また、初期のころは船舶通信やラジオ放送が中心で、携帯電話が普及し始めてからは30年ほどに過ぎません。こうした無線通信の生い立ちを振り返りますと、これほど利用価値のある電波という資源が、この世界に存在していたというのは、奇跡のようにも感じます。

しかし、皆がそれぞれ自分勝手に電波を利用してしまうと、社会全体での利用価値は下がってしまいます。電波という画期的な資源を有効利用していくための制度設計に今後も注力していきます。

月刊テレコミュニケーション 2026年5月号の記事を再構成]

五十嵐大和(いがらし・ひろかず)氏

1974年茨城県生まれ。1999年東京工業大学(現東京科学大学)大学院修了、同年に郵政省(現総務省)入省。新世代移動通信システム推進室長、東北大学電気通信研究所特任教授、電気通信技術システム課長などを経て、2025年7月より現職

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