Web会議システムにとって、重要な周辺機器となるのが、マイクスピーカーシステムだ。PCから1人で参加する場合にはヘッドセットを利用すればいいが、複数人で参加する場合には、マイクスピーカーが必要になる。専用端末型のテレビ会議システムの場合、マイクスピーカーもセット提供されることが多いが、PCを活用するWeb会議システムでは別途、マイクスピーカーを用意することが必要だ。
調査会社のシード・プランニングによれば、国内の会議用マイクスピーカー市場では、2006年からマイクスピーカー「Projectphoneシリーズ」を発売するヤマハがシェア1位の座にあるが、その同社から新しいマイクスピーカーが登場する。「ユニファイドコミュニケーションマイクスピーカーシステム『YVC-1000』」だ。
国内マイクスピーカー市場におけるヤマハのシェア |
ヤマハの上席執行役員で楽器・音響開発本部長を務める長谷川豊氏は新製品について、「従来製品を一段超えた、まったく新しい世代の製品」と紹介。これまでの製品と比べて、大幅に音質が向上しているという。
ヤマハの新マイクスピーカーシステム「YVC-1000」 |
人の声以外の音を除去するノイズリダクションが大幅強化
新製品の音質向上に貢献している機能は複数ある。まず紹介されたのは、音響状態の自動検知・調整機能だ。本体のボタンを押すだけで、その部屋の残響特性に応じた音質に自動調整できるという。
また、「適応型エコーキャンセラー」も備えた。遠隔会議では、スピーカーの再生音をマイクが拾ってしまい、やまびこのようなエコーが発生することがあるが、それを防ぐのがエコーキャンセラー。従来も搭載していたが、「きれいに消すのは、技術的に結構大変。ここにかなりのパワーをかけて開発」(長谷川氏)を行い、強化した。
適応型エコーキャンセラーの概要 |
プロジェクターやエアコンなどから発生するノイズを除去する「ノイズリダクション」も強化されている。人間の声とそれ以外の音を峻別する「HVAD(Human Voice Activity Detection)」という技術を開発。キーボードを打つ音や書類をめくる音なども除去でき、クリアな音声を実現するという。スピーカー音量も2倍になった。記者会見では、音質の良さを紹介するためのデモも行われたが、確かに聞き取り易いクリアな音声だった。
さらに、Projectphoneではマイクとスピーカーが一体になっていたが、YVC-1000は各々が独立した分離型の構成を採用。スピーカー内蔵の本体をディスプレイ近くに設置できるため、話者の映像と音声が一体感を持った自然な会議が可能になったという。
スマートデバイスともBluetooth&NFCで簡単接続
さて、新製品のネーミングの中には、「ユニファイドコミュニケーション」という言葉が入っているが、そこに込められた意味は「多様なデバイスとの接続」である。PCだけではなく、スマートフォンやタブレットとも接続できる。
スマートデバイスも含めた統合的なコミュニケーションに貢献 |
PCとの接続にはUSBで行うが、スマートデバイスとの接続にはBluetoothを利用する。YVC-1000はNFCを搭載しており、NFC対応のスマートデバイスならワンタッチで簡単に接続可能だという。外出先にいる社員にスマートフォンで電話をかけた状態で、スマートフォンとYVC-1000をBluetooth接続すれば、外出中の社員が手軽に音声で会議に参加できる。
また、音声機能の弱いテレビ会議端末用途や、会議以外の用途も狙っているという。執行役員 楽器・音響営業本部 音響営業統括部長の大澤博史氏は、「遠隔会議システムの約4割は会議以外の用途で使われている」というシード・プランニングのデータを紹介。実際、Projectphoneは、横浜国立大学では遠隔講義に、みずほ銀行ではお客様窓口での遠隔相談に使われているというが、こうした会議以外の用途もターゲットにしていく。
会議以外の用途に広がる遠隔会議システム |
YVC-1000の価格は12万円で5月15日から販売を開始する。マイクは5台まで接続可能で、拡張用マイクは3万円。外部スピーカーの接続も可能になっている。