【UCサミット】みずほコーポレート銀行のユニファイドコミュニケーション戦略

国内16拠点、海外59拠点を擁するみずほコーポレート銀行は今年6月、UCの展開を視野に音声インフラの更改を行った。この過程で見えてきたコミュニケーション基盤のあるべき姿と課題とは?――同行IT・システム統括部の長瀬真理子氏が語った。

2010年7月6日に開催された「UCサミット2010」において、みずほコーポレート銀行 IT・システム統括部 プロジェクト統括チーム 調査役の長瀬真理子氏は「ITインフラ基盤としてのコミュニケーションツールの整備と課題」と題する講演を行った。

みずほコーポレート銀行 長瀬真理子氏

同行は、日本国内に16拠点、海外に59拠点を有するグローバル企業であり、今年6月にグローバルで「音声基盤の更改プロジェクト」を終了させた。長瀬氏はその経験から、インフラ基盤としてのコミュニケーションはどうあるべきかについて語った。

みずほコーポレート銀行
みずほコーポレート銀行は、日本国内に16拠点、海外に59拠点を有するグローバル企業

長瀬氏はまず、インフラ基盤の整備経緯について振り返った。「2003~04年にかけて、ネットワークのIP化を行い、その際に将来的な音声のデータ化、ユニファイドコミュニケーション(UC)を視野に、IPテレフォニーサーバーを導入した」。IPテレフォニーサーバーは、東京とロンドン、ニューヨークに設置し、全体をコントロール。だが、IP電話を導入したという程度のレベルで、UCというにはほど遠い状況だったという。そこで長瀬氏らは、2010年7月に使用しているIPテレフォニーサーバーのサポートが終了するのをいい機会と捉え、「UCが展開されないのはなぜか」、また「UCとは何か」をもう一度、一から考えることにしたという。2009年第1四半期から第2四半期にかけてのことだ。

「なぜ」「何」をクリアするために、長瀬氏らは最初に「as is(現状)」と「to be(目標)」のギャップ分析を時間をかけて行ったという。これにより、シンプルなコミュニケーション環境は存在するが、それぞれのサービスが独立して機能しており、統合されていない現状があらためて認識できたという。

「as it」「to be」のギャップ分析を行い、現状と目標をしっかりと認識する
「as it」「to be」のギャップ分析を行い、現状と目標をしっかりと認識する

目標とするのは、高機能なプレゼンスサービスやほぼリアルタイムな遠隔地とのチーム活動を実現するUCが提供されることだが、「現状と目標の間には、大きな差があった。現状の設備環境は、機器ごとに孤立したサイロ型だが、目標とするのは基盤を統一し、その上に機器を乗せようというものだ」と長瀬氏は話した。

機器ごとに孤立したサイロ型から、基盤を統一してその上に機器を乗せる形へ移行することが目標

このような現状を踏まえ、みずほコーポレート銀行では音声基盤の更改プロジェクトを実行。その目的は2つ。1つは老朽化対応としての更改で、もう1つは運用体制および機能の整備である。

「プロジェクトのポイントの1つは、グローバルな視点で電話に関する運用体制を検討すること。国やリージョン(地域)ごとにカルチャーが違うので、グローバルな視点で運用にかかわる体制や環境を整備する必要があった」と長瀬氏は振り返る。具体的には、ピラミッド状にグローバルとリージョン、拠点の3レイヤに分割して整理した。通常の設定変更については各リージョンが対応し、全体品質の維持や管理、統制はグローバルが対応する仕組みだ。

ピラミッド状の運用体制。グローバルとリージョン、拠点の3レイヤーに分割して整理した
ピラミッド状の運用体制。グローバルとリージョン、拠点の3レイヤーに分割して整理した

プロジェクトの実行によって、運用体制についてはかなり整備された。「as isからto beに少し進んだという手応えを感じでいる」(長瀬氏)。だが、次のステップとしてUCを展開していくうえでは、まだ課題は残っているという。

1つは、想定されるコミュニケーションサービスと活用方法。これまではベンダーが提案する事例に基づき、IT部門中心に検討してきたが、そのためユーザーからは「どう使えばいいの」と言われることも少なくなかったという。そこで今後は、ユーザー参加型の検討体制などを確立するなどにより、ユーザー視点での活用施策の検討・提案を行っていきたいという。

課題の2つ目は、今後のコミュニケーションサービスの効果評価方法。当面は、業務測定参照モデル(PRM)を指標とすることを考えているという。

3つ目の課題は、中長期的な活用施策だ。「BCPやワークライフバランスを考慮すると、リモートアクセスがポイントとなる。この観点からもUCは、新たなワークスタイルを創出する大きなポテンシャルを持っている」と長瀬氏は話し、今後の取り組みに対する意欲を現した。

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