KDDIがドコモ、ソフトバンクと大きく異なる点は、Google Apps for BusinessとOffice 365の両方を1社で販売していることだ。KDDIは2013年10月、この両サービスを法人向けクラウドサービスのラインナップに加え、販売を開始した。
「クラウドサービスは数年後にどう変化しているか予測がつかない。両方提供することで、場合によっては利用するサービスそのものを変えることもできる。端末だけでなくクラウドでも『選べる自由』を展開したい」とクラウドサービス企画開発部部長の藤井彰人氏は話す。
KDDI サービス企画本部 クラウドサービス企画開発部 部長 藤井彰人氏 |
同社は「マルチデバイス」「マルチネットワーク」「マルチユース」からなる3M戦略を法人市場でも推進しているが、iPhone/iPadを導入し品揃えを強化したデバイス、固定・移動の統合サービスで先行しているネットワークと比較すると、クラウドサービスについてはビジネスアプリをパッケージ化し月額390円で提供する自社サービス「ベーシックパック」が中心で、ラインナップの拡充が遅れていた。
今回、Google AppsとOffice 365という急成長している二大グローバルサービスを投入したことは、「クラウドでもグローバルベストなものを提供したい」(藤井氏)との狙いもある。
KDDIでは、スマートバリュー for Businessに続いて、昨年11月からはクラウドサービスとスマートデバイスをセットにすることで最大2年間、月額525円を割り引く「クラウドセット割引キャンペーン」を実施している。
Google Appsの利用料金が実質無料になる点をアピールしており、「スマートフォンだけを入れても意味がないので、Google Appsとセットで導入しよう」という中小企業が多いという。
これまで中小企業向けにはベーシックパックを訴求し、セット率は30%を超えているが、方針を切り替え、まずGoogle Appsを紹介するようにしている。「グローバルなブランド力を持ち、しかもメールサービスなどはコンシューマー向けと同じインターフェースで利用できるので、スマホとのセット率はベーシックパックを上回るのではないか」とソリューション事業本部ソリューション事業企画本部事業企画部副部長の中馬和彦氏は見る。
KDDI ソリューション事業本部 ソリューション事業企画本部 事業企画部 副部長 中馬和彦氏 |
とはいえ、Google Appsといえども万全の機能を備えているわけではない。名刺管理のような日本固有の機能については対応していないうえ、端末を紛失するリスクを考慮するとMDMなども必要になることから、「Google Appsに足りない機能はベーシックパックで補うという『相乗効果』が期待できる」(中馬氏)という。
一方、Office 365については、マイクロソフトのシステムをすでに利用している大企業が対象となる。情報システム部門を持っているような企業では、どうしても社内の稟議や決裁に時間がかかり即断即決は難しく、Google Appsに比べるとまだ導入数は少ないが、今年以降、導入企業が増えると見込んでいる。
特に大企業の間では「イントラネット以外からはアクセスさせたくない」というニーズが増えているが、Office 365の場合、KDDIの広域ネットワークサービス「Wide Area Virtual Switch」と専用網を通り、第三者のネットワークを経由せずダイレクトにマイクロソフトのデータセンターに接続する。アクセス制限などをかけることなくセキュアに接続できるのは、3M戦略を展開するKDDIならではの強みだという。