デジタルツインにも不可欠 “街丸ごと”で防災強化
現実空間をデジタル上に再現するデジタルツインは、ロボット運用や屋内ナビゲーション、設備管理などに不可欠な基盤技術だ。高精細映像を常時送受信し、リアルタイムで更新するには、ローカル5Gの大容量・低遅延通信性能が極めて有効だ。
東京駅前の大規模ミクストユース型施設「東京ミッドタウン八重洲」では、地下1階から7階までを3Dデジタルツイン化。ARを活用した屋内ナビゲーションは、GPSの代わりにVPS(Visual Positioning System)を用いて、位置を正確に特定する。専用アプリを通じたARクーポン配信やフォトスポット演出など、リアル空間の体験価値をデジタルで拡張する試みが進められている。
また、オフィス向けのデリバリーロボットの実証も進む。ロボットは、“頭脳”をクラウドに置くブレインレスアーキテクチャを採用している。ロボットは広範囲を移動しながら、搭載カメラの高精細な映像をクラウドへリアルタイムで伝送。クラウド上の地図データと照合することで、自己位置を特定する。そのため、常に高品質な無線通信が求められる。それをローカル5Gが支えている。「ロボットのコストを抑えられるため、大規模導入を想定する施設では特に有効です」と西原氏(図表4)。
図表4 東京ミッドタウン八重洲におけるローカル5G活用

デジタルツインを防災に役立てる取り組みも始まっている。山形県長井市は、最上川流域を中心に水害が多発してきた。災害が複雑化・多様化する中、限られた人員で迅速かつ的確に対応を行うため、NTT東日本は他社とも協働し、同市の市域全体をデジタルツイン化。これにより、水害シミュレーションによる被害エリアの確認や、河川に設置する水位センサーやカメラによる現場状況のモニタリングが3次元で可視化できる環境が構築された。住民の安全な避難につなげる啓発活動への活用などが期待され、次年度以降もユースケースの発掘に向けて市との検討を進める予定だ。
自動運転にもローカル5G キャリア網を補完し実装へ
公共交通の人手不足解消に向け、自動運転バスの社会実装も加速している。
NTT東日本は2021年から、ローカル5Gを活用した自動運転の実証に取り組んでおり、現在は研究施設内にとどまらず、公道での実証へとステージを広げている。
東京都狛江市では、駅と住宅地を結ぶ約5kmの区間で自動運転バスの走行実証を実施中だ。
交差点での安全走行や路上駐車車両の回避といった複雑な判断を支援するため、道路側にローカル5G基地局を組み込んだスマートポールを設置。カメラ、センサーから取得した情報や信号機情報を車両にリアルタイム伝送し、車載センサーの死角を補っている(図表5)。
図表5 交差点における自動運転車両制御

「ローカル5Gは、人が密集する駅前ロータリーなど、キャリアのネットワークを補完するかたちで整備しています」と、NTT東日本の森永百合香氏は語る。
NTT東日本では、通信設備構築で培った知見を活かし、路側インフラの設計から施工・保守までを一貫対応できる体制を整備。今後は自動車メーカーなど企業との連携を深め、社会実装の拡大を目指している。
e-City Laboとグループ網が各地での実装を支える
これまで紹介した事例に加え、イベント会場やスタジアム、一次産業のスマート化など、多様な分野でローカル5Gの特性を活かしたユースケース創出が目覚ましく進んでいる。
こうした取り組みを支えているのが、NTT中央研修センタ内の共創拠点「NTT e-City Labo」だ。ローカル5Gなどの先端無線技術の展示・実証を行い、企業や自治体に課題解決のヒントを提供。2022年5月の開設以来、来場者はのべ2万5000人を超えている。
さらに、NTT東日本グループの社員が提案から運用までを一貫してサポートできる地域密着の体制も、NTT東日本の大きな強みだ。
今こそ、課題解決にローカル5Gを活用するときだ。
<お問い合わせ先>
NTT東日本株式会社
ビジネス開発本部
無線&IoTビジネス部
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