GNSS時刻同期イベントが“日本初”開催 光ファイバーや「みちびき」でGNSS脆弱性に対応

IIJが日本初のGNSS時刻同期をテーマとしたイベント「GNSS TimeSync 2025」を開催。5G、金融、電力など社会インフラで必須となる時刻同期技術について、セイコーソリューションズ、古野電気、精工技研、内閣府、NICTが最新動向と課題を発表した。

光ファイバー伝送でノイズをシャットアウト A-RoF技術でGNSS受信システム構築

精工技研 機器事業部 技術営業 担当課長 藤浪圭氏

精工技研 機器事業部 担当課長 藤浪圭氏は、A-RoF(Analog Radio over Fiber)技術を活用したGNSS受信システムの構築手法について説明した。GNSS受信システム構築における課題に、アンテナから受信機までの接続、アンテナ系統の冗長性、雷や電位差に対する受信機保護、ジャミング・スプーフィング対策の4点があると指摘。これらの課題をA-RoF技術の活用で解決するという。

光ファイバーは低損失のため長距離伝送が可能で、雷・電磁ノイズの影響を受けないと藤浪氏は説明。無線電気信号に合わせてレーザー光を強度変調することで光に無線信号情報を載せて伝送し、フォトダイオードで元の電気信号に戻す仕組みで、アナログ・デジタル変換なくアナログで完結する点が特徴だ。

GNSS受信システムの光化により、アンテナ系統の冗長化、建屋内を光ファイバーで伝送し同軸ケーブル敷設が不要となること、長距離伝送や光分岐によるフレキシブルな受信点配置、雷・電位差のシャットアウトが実現できると述べた。ジャミング・スプーフィング対策としては、アンテナの長距離離隔、アンテナの多点化、アンテナ指向性の利用、GNSSのホールドオーバー、LEOやPTP等の代替ソースへの切替を示した。

A-RoF技術:Analog Radio over Fiberの紹介

2026年度から7機体制 「みちびき」でGPS超える高精度測位実現へ

内閣府 宇宙開発戦略推進事務局 準天頂衛星システム戦略室長 参事官 三上建治氏

内閣府 準天頂衛星システム戦略室長の三上建治氏は、準天頂衛星システム「みちびき」の7機体制への拡張計画を発表した。2025年2月にみちびき6号機の打ち上げに成功し、今年度中に5号機と7号機を打ち上げ、2026年度から7機体制での運用を開始する予定だと述べた。

7機体制では他国のGNSSに頼らず、みちびきのみで測位が可能となる「持続測位」を実現できるという。みちびきの測位精度について、GPSの5~10メートルに対し、高精度測位サービス利用時はセンチメートル級(最高6センチメートル)を達成すると述べ、「テニスコート半面の誤差がテニスボール程度まで縮小する」と説明した。

2025年3月末時点で、みちびきに対応する製品は447種類に達しており、日産自動車の運転支援技術「プロパイロット2.0」やドローン、農業機械など幅広い分野で採用が進んでいると三上氏は述べた。スプーフィング対策として「信号認証サービス」の運用も開始し、測位信号に含まれる航法メッセージが本物であることを電子署名技術により証明することで、位置・時刻情報の信頼性を高めるという。自動運転、農機、建機、ドローン、金融機関のタイムサーバーなど、安全と信頼性を必要とする分野での活用を見込んでいると説明した。また、将来的には11機体制へ拡張してバックアップを強化する計画であることを述べた。

衛星測位の精度の比較:GPSとGPS+みちびき

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