<特集>AI×通信 次の焦点は?エヌビディアと通信事業者18社が描く「AI-Native Telco」への道

AIの社会実装において、通信事業者とそのネットワークはどんな役割を果たせるのか。エヌビディアは世界各国の通信事業者と組み、「AI-Native Telco」の道筋を切り拓こうとしている。

エヌビディアが6月にパリで開催した「GTC Paris 2025」で強調したことの1つが、AIファクトリー構築における通信事業者の役割と、そのビジネス機会の大きさだ。

AIファクトリーとは、データの取り込みからトレーニング、ファインチューニング、大規模な推論に至るAIのライフサイクル全体を管理するために専用設計されたコンピューティングインフラを指す。簡単に言えば、AIワークロード向けに最適されたデータセンター(DC)だ。

この担い手として通信事業者は外せない。さらに、世界各国でソブリンAIインフラを構築する機運が高まるに連れて、「ソブリンAIプロバイダー」としてもその存在が急浮上。エヌビディア テレコムビジネスユニット エバンジェリストの野田真氏は「国全体にネットワークとコンピューティングリソースを持つため、ソブリンAIを作り、提供するのに非常に適した事業体とみなされている」と話す。エヌビディアと共同でAIファクトリーを構築する動きが世界中に広がっている。

エヌビディア テレコムビジネスユニット エバンジェリスト 野田真氏

エヌビディア テレコムビジネスユニット エバンジェリスト 野田真氏

欧州5者がソブリンAI構築へ

エヌビディアは「NVIDIA Cloud Partners(NCP)」と呼ぶプログラムを展開し、AIファクトリー構築のリファレンスアーキテクチャを提供している。これに参加し、AIファクトリーを構築している通信事業者は、公表されているだけで18社。KDDI、ソフトバンクも名を連ねる。

背景には、上記のインフラ面の強みに加えて、政府や企業と信頼関係を確立していることもある。ミッションクリティカルシステム運用の経験・ノウハウも十分だ。なにより、AIファクトリーは、通信事業を長年支えてきたコネクティビティに代わる新たな成長軸となり得る。

先行するのは欧州だ。GTC Parisでは欧州の5事業者(図表1の緑)との協業が発表された。AIファクトリーに加えて、欧州におけるエッジAIインフラの開発・拡大も視野に入れたもので、今後、様々な産業で欧州企業がAIモデルをカスタマイズしたり、AIエージェントを開発・展開するための基盤が整備されていく。

図表1 通信事業者によるソブリンAIインフラの構築例(緑は欧州)

図表1 通信事業者によるソブリンAIインフラの構築例(緑は欧州)

仏Orangeは、法人部門のOrange Businessが企業の生成AI開発・展開を支援するLive Intelligenceプラットフォームを構築。欧州全域の企業に提供し、新たな収益源とする。

ノルウェー初のソブリンAIファクトリーを構築したTelenorは、GTCParisで増強計画を発表。同社は再生可能エネルギーのみで稼働し、余剰エネルギーを電力網に還元する新たなAI-DCの追加も計画している。

Swisscomも、Swiss AI Platform上でAIエージェントを開発し、企業向けサービスを展開。Telefonicaは、スペイン全土に分散型エッジAIインフラを試験導入し、エッジAI向けに数百基のNVIDIA GPUを導入予定だ。Fastwebは、初のイタリア語言語モデル「MIIA」を構築している。

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