多様な発想で新しいチャレンジをしないとNo.1は獲れない
内永氏によると、ダイバーシティの重要性が増している背景には、次の社会変化があるという。
まずはイノベーションの加速だ。歴史を振り返れば、自動車や電話、電力など、様々なテクノロジーがビジネス、そして社会の仕組みを変革してきたが、過去と現在では大きな違いがある。それは、あるテクノロジーが社会の仕組みを変えるまでの時間だ。
「かつては、あるテクノロジーが登場してから社会の仕組みが変わるまで、60年から100年かかっていた。しかし現在では5年、10年と非常に短くなってきている」。イノベーションの進むスピードが速く、社会の仕組みが短期間にどんどん変化していくのが現代の特徴というわけだ。
イノベーションが社会の仕組みを変える時間は急速に短くなってきている |
さらには、「World is Flat――要するに世界は小さくなっている。世界中で起きたいろいろな出来事が、今日明日のビジネスに即、影響を与えるようになっている」ことも、ダイバーシティの重要性が増している要因として挙げられるという。
イノベーションの加速とグローバリゼーションの進展――この2つが現代のビジネスの在り方を大きな影響を与えていることに異論はないだろうが、それがなぜダイバーシティと結びつくのか。
「このように変化が激しい環境のなかでは、誰かがやったビジネスモデルを踏襲してブラッシュアップするのでは、ナンバー1は獲れない。新しいビジネスモデルにチャレンジしない限り、ナンバー1を獲れないが、そのためには違った価値観、違ったバックグラウンド、違った強みを持った人たちが集まったほうが、新しいイノベーティブな考え方が出てくる確率が高い」
組織活性化の鍵はダイバーシティ |
IBMの経営危機にしても、ダイバーシティの欠如が一因だったという。
「IBMが93年に危機に直面した当時、ディシジョンメイキングしていたのは、いわゆる白人の東海岸のエリートたちで、モノカルチャー(単一の文化)だった。彼らは皆、頭の良い人たちだから、世の中の変化については分かっていた。今言われているクラウドやビッグデータのようなことも当然予測していた。だが、それを受けて会社をどう変えていくかというと、同じ過去の成功体験からしか物事を見ることができなかった」。多様性のないモノカルチャーな発想、組織文化が、変革の妨げとなっていたのだ。