米国のM2M専業キャリア、Numerexは課題をどう克服したか?
米国のNumerex社(http://www.numerex.com/)は、世界でも珍しいM2M専業の通信事業者だ。携帯電話事業者のCingularから独立し、早い時期にM2Mのプラットホーム開発会社を買収することでM2Mビジネスのパイオニア的な存在となった。ここまで挙げた課題も独自にクリアしている。
M2Mデバイスに関しては、Numerexが事前に検証したベンダー製品を揃えることで解決している。Numerexの認証製品を利用する限りにおいては、NumerexのM2M SDPとの組み合わせで、すぐにM2Mサービスを利用できる。ユニークなのは、認証済みのM2Mデバイスは同社のWebサイト(
http://store.numerex.com/)でも購入できることだ。また、いったん認証製品に登録されたデバイスについては、Numerexが障害等の一次窓口になるので、ユーザーも安心して利用できる。
図表4 NumerexのM2M用SDP「Numerex FAST」 |
NumerexのM2M用SDP「Numerex FAST」では、サービス管理や端末・加入者管理など、様々な機能がSaaSで提供される。写真は、Numerex FASTのWeb UI画面 |
NumerexのM2M SDPである「Numerex FAST」では、Numerex自身が通信事業者であるため、SIMのアクティベーションや課金も容易に行える。また、長年M2M専業の通信事業者としてビジネスを展開してきた実績があるため、社内には多くのM2Mエキスパートがおり、初期のコンサルティングから設計、デリバリーまでキャリア主導で作業が完結する。グローバル展開、さらに傘下に衛星通信会社も所有することから海上におけるトラッキングにも対応可能だ。業種別に8種類以上のSaaSも提供している。
まさにエンド・トゥ・エンドでのM2Mソリューションを実現しているといえるだろう。
それでも必要なM2Mデバイスの標準仕様
NumerexはM2M専業キャリアとしての長い歴史の中で、独自に課題を解決してきたわけだが、今後M2M市場がさらに発展していくうえでは、やはりデバイス制御プロトコルの標準化は不可欠だ。
現在、M2Mデバイスの制御方法として一般的なのはATコマンドである。ATに続けて様々なコマンドを定義することでデバイスの設定や制御を行うが、AT以下のコマンドは各ベンダーが独自に定義しており、ベンダー間で基本的に互換性がない。また、ATでない独自コマンドを利用するものも多く、制御する側から見ればやっかいな問題だ。
こうしたなか、1つの可能性としてSIM Application Toolkit(SAT)の活用が浮上している。セルラー系のM2Mデバイスであれば必ずSIMカードとRFモジュールを搭載しており、このSIMを中心に標準化を図ろうというアプローチだ。3GPPのTS51.014で規定されている。
SATを活用した方法では、デバイス上ではなく、SIMカードのメモリエリアにアプリケーションを置き、そのアプリケーション経由でデバイスの様々な情報を取得したり、コントロールを行う。
図表5 SIM Application Toolkit(SAT)を利用したM2Mデバイス制御 |
TEはSIMカード、TAはRFモジュール、ME/MTはM2Mデバイスを指している |
最近のRFモジュールはSATをサポートしているが、さらにM2Mデバイス側の対応も必要であり、現時点ではSATを使った仕組みを利用できないM2Mデバイスは多い。だが、今後開発されるM2Mデバイスにこの機能が標準的に盛り込まれるようになれば、M2Mデバイスの制御プロトコルの標準化も一気に進展することになる。