クラウドPBXのコストは?
では、クラウドPBXの導入にあたって、どのような観点でソリューションを選ぶべきなのか。押さえておきたいポイントを整理する。
まず検討時に気になるのが、料金体系だろう。
NTTドコモビジネスのArcstar Smart PBXは、1IDにつき550円~(税込、以下同)という手頃な価格で利用できる。例えばスマートフォン10台で契約する場合、基本料などの諸費用も含め、月額1万3486円~となる。また、オンプレ型PBXを設置する場合、数十万~数百万円の初期投資が必要なケースもあるが、Arcstar Smart PBXであれば、初期費用を1万8700円に抑えられる点もメリットだ。
米Zoom Communications(Zoom)の日本法人であるZVC JAPANが展開する「Zoom Phone」の基本プランは、月額1650円~で利用可能だ。また、通信事業者などが提供するクラウドPBXでは、通話料が従量課金制となっているケースも少なくないが、Zoom Phoneの場合、月額3300円~でかけ放題の「グローバルセレクトプラン」を選択できるのがポイントだ。
ダッシュボードで音声品質を可視化
クラウドPBXを選ぶうえで、音声品質も重要な判断材料の1つになる。クラウドPBXは「音声品質が悪い」「通話が途中で途切れる」といったネガティブな印象を持たれがちだったが、そのイメージは着実に払拭されつつある。
例えばZoom Phoneには、パケットロス等が発生した場合に、それを補完することで音声品質を維持する独自技術が組み込まれている。2025年7月17日に開催されたリアルイベント「Zoom Experience Day Summer」に登壇した代表取締役会長兼社長の下垣典弘氏は、「高い音声品質が、お客様から選ばれている理由の1つになっている」とアピールした。
音声品質を可視化できるダッシュボードを提供するベンダーも増えている。RevCommが提供するクラウドPBX・MiiTel Phoneの管理・分析プラットフォーム「MiiTel Analytics」では、通話ごとの利用デバイスや、通信状況の詳細情報を確認できる。これにより、音声品質の劣化原因を特定しやすくなる。
NECプラットフォームズが提供するUNIVERGE BLUEでは、通話中に音声品質が「良い」「中」「悪い」の3段階で表示される。画面をタップすると、パケットロスやジッターなど、通話品質に影響を及ぼす主要なパラメータを確認できる。また、通話品質が「悪い」になると、キャリア網を使用した通話への切り替えを促すメッセージが表示される。
NECプラットフォームズのUNIVERGE BLUEでは、通話品質を「良い」「中」「悪い」に可視化。通話品質が「悪い」になると、キャリア網を使用した通話へ切り替えるようメッセージが表示される。品質監視ツールを使用することで、通話品質に関する詳細情報の確認および通話品質低下の原因特定も可能(出典:NECプラットフォームズ)
また、日/週/月単位での音声品質を見える化する「サービス品質監視ツール」を用意。例えば1週間の通話数が17件の場合、そのうち音声品質が「良い」は14、悪いは「1」といった具合に、音声品質の状況を具体的に把握できる。これにより、通信環境の問題点を早期に発見し、迅速に対策を講じることも可能になるだろう。
NTTドコモビジネスも、音声品質が低下した際、画面上にアラートを出す機能を搭載。「音声品質は、お客様側のネットワーク設備が原因で劣化するケースも多い。アラートが頻発する環境であれば、自社のネットワーク環境の見直しにつなげてほしい」と同グループ 主査の藤岡知江子氏は言う。
なお、NTTドコモビジネスやZoom、NECプラットフォームズでは、音声品質を事前に確認できる無料トライアルも実施している。こうしたサービスを試してみるのも1つの手だ。