大規模ユーザー中心に導入が加速
では、どのような企業がデスクトップの仮想化に踏み切っているのか。企業規模という点で見ると、仮想デスクトップを採用する企業は大企業が中心だ。ソフトバンクの場合、小規模でも300ユーザー以上、メイン顧客は数千ユーザー規模だという。ユーザー数が多いほどコストメリットが働くからだ。導入に当たっては、部門単位で仮想化を進めていくケースが多い。
導入メリットについては既述したが、いまホットな動機は、スマートデバイスを使って社外からでも情報システムにアクセスして仕事が進められる柔軟なITインフラを構築したいというもの。例えば、タブレット端末を用いてビジネスアプリケーションを利用できる環境を構築すれば、どこでも仕事をすることが可能になる。ワークスタイルの革新を進めたい企業が仮想デスクトップに注目している。
また、仮想デスクトップを利用するのに、クラウド型サービスを選択するか、オンプレミス型を選択するか、その分かれ目はどこにあるのだろうか。
前者のメリットは、データバックアップなど災害対策等に関連する機能も同時に手に入れられることだ。一方、デスクトップを仮想化する際に企業側が独自の機能を求めるなら、カスタマイズが可能なオンプレミスを選択することになるだろう。
デバイス選択の自由を促進
ICTの世界では今、インフラと端末の分化が進んでいる。それによって「デバイス選択の自由が始まっている」と、ネットマークス・技術推進本部ソリューションマーケティング部ソリューションサポート室マネージャーの清水規氏は話す。
同じアプリケーションを社内の自席PCやノートPC、タブレット端末など、さまざまなデバイスで利用できる環境が整い始めたことにより、エンドユーザーは、業務シーンにふさわしいデバイスを選択して仕事を進めることが可能になる。これを表す「CYOD( Choose Your Own Device )」という言葉も米国で生まれているという。
私物端末を業務に使うBYOD(Bring Your Own Device)を企業が採用する際には、セキュリティ対策が欠かせない。仮想デスクトップは、BYOD/CYODを促進させる仕掛けとなりうる。同社の高木氏は「営業部門などモバイルユーザーを抱えているところに提案を行っている」と話す。
iPadを販売しているソフトバンクも、仮想デスクトップとiPadを組み合わせて使うことを提案しており、モバイルが商談を推進するキーワードになっている。ここでも、BYODは有力なトリガーとなっているようだ。タブレット端末にVMware Horizon Viewのクライアントソフトをインストールすれば、私物の端末側に社内データを一切残さない仕組みを構築できる。
BYODで懸念されるセキュリティ確保が仮想デスクトップの構築によって担保できるのだ。スマートデバイスがさらに普及していく今後、仮想デスクトップの重要性もまたいっそう高まっていくことが確実だ。