飯能信用金庫は、埼玉県飯能市を主要拠点とし、同県西部および東京多摩地区に40店舗と4ヵ所のローンプラザを展開する。同金庫の特長は、経営基盤強化を目的とした合併が相次ぐ金融業界にあって、合併を経ることなく独力で預金増強の戦略を進めていることだ。2007年11月には預金量9000億円を達成。目標とする「預金量1兆円」もすでに射程圏内にある。
業績伸長の基礎となっているのは、信金・信組の基本と言える“地域密着”“Face to Face”の徹底だ。事務管理部副部長兼システムグループ上席調査役の森谷慶一氏によれば、定期積金の集金を軸としながら顧客との密着度を高める戦略が、この実績を生み出しているという。
「地域性という、信用金庫が本来持つ優位性を活用する営業戦略は、メガバンクはもちろん地方銀行にも真似のできないものだ」(同氏)
営業支援へのIT活用にも取り組み始めており、現在は世帯・事業者情報データベースを活用した新たな営業支援システムの構築等も進めている。
事務管理部副部長 兼 システムグループ上席調査役 森谷慶一氏 | 事務管理部主任 沼田祥宏氏 |
同一IP網上に5つの機能
その飯能信用金庫が2006年から、本部と40余の支店・店舗を結ぶIPネットワークの整備を開始した。
情報セキュリティの観点から、勘定系等の基幹システムを運用するネットワークを安易に他のシステムやサービスと共用することはできない。そのため、インターネット接続を実現するためだけでも基幹ネットワークとは別の網が必要になる。
また、同金庫では従来、拠点間の通話にすべて公衆網を使っていた。外部のサービス事業者へ委託していた営業時間外のATMガイドホンの受電、ATMコーナーの映像監視用にもそれぞれ別個の回線を用意するなど、回線コストが嵩み、複雑な運用を強いられていた。
そこで、基幹系とは別に、Bフレッツにより全拠点を結ぶネットワークを構築し、これに既存システムの運用を統合。ネットワークを高効率で運用し、最大限に活用する整備計画が立てられた。第1ステップとして、インターネットの不正利用や、不適切なサイトの閲覧を防止するWeb監視システムとFAX誤送信防止システムを導入。そして08年春からは、音声システムの刷新に着手した。
各拠点にはNECインフロンティアのIP対応ビジネスホン「UNIVERGE Aspire X」を導入。拠点間の電話・FAX通信をIP化し、内線網もBフレッツ網に統合した。
さらに、ATMコーナーの映像監視、ATMガイドホン受電のコールセンターサービスを提供している「しんきん情報サービス(SIS)」ともネットワークを接続。ガイドホン通話と映像監視の回線をIP化し、合わせてDVR(デジタルビデオレコーダー)の死活監視や異常電波検出(隠しカメラ検知)等も導入した。
ネットワーク上では現在、図表1の通り、5つの機能が統合運用されている。
図表1 IPネットワーク上で運用している5つの機能 |