「曇天続きのPBX/ビジネスホン市場に薄い日差しが差してきた」――。
2008年のリーマンショックによって急降下、さらに東日本大震災の影響を受け、低迷を続けてきたPBX/ビジネスホン市場に、ここにきて復調の兆しが見えている。
PBX/ビジネスホンメーカーのなかには、「リーマンショック以前の売り上げに戻った」「2012年度下半期は過去最高の売り上げを記録した」といった声も聞かれる。その背景には、企業の投資意欲が回復しつつあること、また繰り延べられてきたリプレース需要に向けて各社がよいタイミングで新製品を投入できたことなどがある。
新製品が目白押しのPBX
PBX市場では、日立製作所が2012年2月1日に「NETTOWER CX-01」、2月27日に富士通が「LEGEND-V」、OKIが9月20日に「DISCOVERY neo」を相次いで発売した。いずれもレガシーとIPを組み合わせたハイブリッド型IP-PBXだ。
「2004年にフルIPに適したIPテレフォニーサーバー『SS9100』を発売したときは、『5年後には多くの企業の通信システムがフルIPになる』と話していたが、信頼性と堅牢性に勝るレガシーへのニーズは予想以上に根強いことがわかった」とOKI・通信システム事業本部・企業ネットワークシステム事業部・PBXビジネスユニットのビジネスユニット長を務める西田慎一郎氏は語る。
数年前までどのメーカーもフルIP化を声高にうたっていたが、結果的にユーザー企業のニーズは期待したほど高くなかった。
「レガシーニーズ」が根強い理由の1つとして、2011年3月の東日本大震災の影響が挙げられる。震災後に実施された計画停電の際、フルIPのシステムはすぐにダウンしてしまったが、レガシーのシステムはバッテリーで3時間ほど稼働し続けたからだ。
「フルIPシステムで導入されるUPS(無停電電源装置)は瞬断対策のもの。PBXに搭載されたバッテリーとは設計思想が異なる」。日立製作所の情報・通信システム社、通信ネットワーク事業部ソフトウェア開発本部ソフトウェア設計第三部主任技師の杉浦紀之氏はこう説明する。
「スマホ連携」もPBX市場の大きなトレンドの1つだ。社内の無線LANを利用し、スマホを内線電話として活用するソリューションである。業務でスマホを利用したいとする企業が増えてきたことを受けて用意された機能で、各社とも「商談では必ず話題に上る」と話す。
また、PHSの動きが好調だということも各社に共通する。スマホの内線化や、無線IP電話機の導入で必要となる無線LANの基地局設計と運用が難しいのに対し、PHSはこなれた技術で比較的簡単に設計できるため販売店が取り扱いやすく、音声品質が安定している。また、端末価格が安い点などが評価されている。