ADSPは「あらゆる場所に展開が可能」
ADSPはどのようなプラットフォームになるのか。ロコ・ドヌー氏は、アプリケーション配信とセキュリティの統合プラットフォームが必要な理由を次のように説明した。
1つは前述のように、ハイブリッドクラウド/マルチクラウド化の進展によって、アプリケーションが様々な場所にホスティングされていること。2つめは、様々なアプリケーション、そしてマイクロサービスがAPIを介して接続することだ。これにより、アプリケーション配信・管理が複雑化している。
その結果、セキュリティ要件も多様化し、単一のポリシーで統合管理することが非常に難しくなっている。
IT/ネットワーク業界では、エンドポイント保護プラットフォーム(EPP)やセキュアアクセスサービスエッジ(SASE)のようなプラットフォームも登場・普及してきているが、「アプリケーションとAPIを保護する統合プラットフォームは存在しない」とロコ・ドヌー氏。ADSPはこのギャップを埋めるものになると話した。
ADSPは既存のプラットフォームのギャップを埋める
ADSPの特徴の第1は、アプリケーション配信機能とセキュリティ機能を「単一のソフトウェアスタックで提供することで、運用を簡素化する」ことだという。F5はこれまで、APIセキュリティのWib、アプリケーションスキャニング技術を持つHeyhack、ボット保護のShapeといったテック企業を次々と買収。これらの技術をADSPに組み込んで提供する。
第2の特徴は、「あらゆるフォームファクターでどこにでも展開できる」ことだ。ハードウェアアプライアンスはもとより、ソフトウェア、コンテナ、SaaSと様々な形態で展開することが可能で、「GPUクラスターやDPU/Smart NIC上にも適用できる」。例えばNTTドコモとは、エッジAI基盤のNVIDIA Bluefield-3 DPUに、CNF(クラウドネイティブ・ネットワーク機能)としてアプリケーション配信やセキュリティ機能を展開するための実証を行っている。
また、第3の特徴として、AIを活用したセキュリティ機能も実装する。F5独自のAIモデルとデータを活用した分析機能のほか、ADSPの管理を容易にするAIエージェント技術も導入。プログラミング不要でWAFルールを作成できる機能や、セキュリティインシデントの分析をAIが行う機能なども擁しており、エンジニア不足という日本の課題にも対応できるとロコ・ドヌー氏は自信を見せた。
ADSPの全体像
日本のADSP展開戦略は
日本においては、オンプレミスでF5製品を利用している顧客のクラウド移行を支援するなかで、ADSPの価値を訴求すると木村氏は説明した。具体的には、クラウド化を支援する3つのツールを提供する。
ADSPの国内導入へ3つのツールを活用
1つが無償提供している「AST(Application Study Tool)」で、BIG-IP設定を詳細に確認できる。さらに、オンプレミスアプリケーションの正常性をクラウドから測定する「Synthetic Monitoring」、アプリケーションの脆弱性診断を週・日単位の高頻度に実行できるクラウドサービス「WAS(Web Application Scaning)」を提供。ミッションクリティカルなアプリケーションが多い日本の顧客の脆弱性診断を効率化する。
また、ADSPの国内展開に向けてパートナーシップも強化する。木村氏は新パートナーとして、SCSKとの協業を発表。F5のソリューションと、SCSKのSOC監視サービスを組み合わせた共同ソリューションを提供開始する。木村氏は「単なる製品の販売だけでなく、コンサルティングから導入までを包括的に提供できる体制を構築し、ADSPのプラットフォームセリングを促進する」と、この協業の重要性を強調した。