新戦略「SORACOMプラットフォームをAI Enabledに」
ソラコムは今回、これらの課題を克服するための新戦略「リアルワールドAIプラットフォーム」を発表した。現実世界とデジタルをつなぐSORACOMプラットフォームを、「現実世界のすべてをAIにつなぎ、より良い世界を創造するプラットフォームへと進化させる」という。
新戦略「リアルワールドAIプラットフォーム」
どのように進化させるのか。玉川氏は「SORACOMをAI Enabledにする。つまり、生成AIから使ってもらえるようにする」と話した。
その具体策が、生成AIからSORACOMのAPIをリモート実行できるMCPサーバーの提供だ。MCP(Model Context Protocol)とは、AIが外部データやツールと連携するためのプロトコルで、これにより、AIアプリケーションと各種サービスが簡単に接続・連携できるようになる。
生成AIとSORACOMをつなぐMCPサーバー
SORACOMはもともと多様なAPIを公開しており、これを生成AIから使えるようにすることで「生成AIをフィジカル(現実世界)とつなぐインターフェースになる」と玉川氏。活用例として、SORACOMの課金情報を基にグラフを作成してコストを分析、さらにコスト削減案を考えてもらうデモを実施した。
現場のデジタル化へIoTデバイスも進化
新戦略の打ち手は、これだけではない。CEO of Japanの齋藤洋徳氏は、生成AIと組み合わせた活用事例が増えているというクラウド型カメラサービス「ソラカメ」のアップデートについて説明した。
ソラカメはWi-Fi経由でクラウド録画できるサービスで、冒頭で紹介した2事例もこのソラカメを使ったものだ。現場とクラウド/AIをつなぐ「目」の役割を担うもので、7月16日から屋外設置に適した2つのキットを販売開始する。
屋外で使えるソラカメキットを発売
1つは、ルーターと大容量SIMを防水筐体に格納した「ソラカメ屋外スターターキット」。もう1つが、太陽光パネルと蓄電池も内蔵した「ソラカメ屋外ソーラーキット」だ。従来は、屋外に設置する場合はユーザー側でWi-Fiルーターの防水施工などが必要だったが、これからは「現場に持っていって置くだけで、すぐに使える」(齋藤氏)。
IoTデータ分析基盤「SORACOM Query」が正式リリース
生成AIを用いたIoTデータ分析基盤サービスも提供開始する。SORACOMプラットフォーム上に蓄積された通信管理情報や時系列のIoTデータを検索・分析できる「SORACOM Query」だ。
ソラコムは2023年から一部ユーザーでSORACOM Queryの先行利用を開始し、フィードバックを受けながら機能を拡充してきた。これを2025年7月16日から正式に提供開始する。
SORACOM Queryではリアルタイムデータの可視化やクエリ実行によってIoTデータの分析が可能だが、今回の正式リリースに合わせて、新機能「QueryアシスタントAI」機能を搭載する。自然言語をSQLに変換する機能で、「IoTデータの異常値を検出してください」といった自然言語による問い合わせが可能になる。
SORACOM Queryと各種サービスの連携イメージ
また、最高技術責任者 兼 CEO of Americasの安川健太氏は、「正式提供によって様々なサービスとの連携も可能になった」と語った。SORACOM Query APIによって、SORACOM上の様々なサービスはもちろん、ユーザー企業の自社システムや、サードパーティ製のBIツールとの連携も可能になる。これにより、生成AIに対して、より多くの判断材料を提供することができる。
例えば、「センサーがイベントを検知したら、SORACOM Queryで関連データを取得して、過去データや他のセンサーデータも踏まえた判断を生成AIに依頼することができる」(同氏)。専門知識がなくても特定の傾向や異常の兆候を抽出するといったことが可能になり、現場に危険が生じる可能性があれば警告を発したり、将来的にはロボットを動かして現場を調査するといったことも実現できると安川氏は話した。