中小企業のDXにとって「自走化」が重要な理由
同日開催した記者説明会では、Node-AIの製品担当であるNTT Com イノベーションセンター テクノロジー部門 プロダクトマネージャーの切通恵介氏が、取り組みの詳細を説明した。ポイントに挙げたのは、AIモデル開発とデータ活用の「自走化」だ。外注に頼るのではなく、「住吉工業の担当者自身が、水質を予測するAIモデルを開発した。NTT ComがNode-AIを提供し、モデル開発とデータ活用人材の育成を支援することで、住吉工業が主導で開発した」。
NTTCom イノベーションセンター テクノロジー部門 プロダクトマネージャーの切通恵介氏
住吉工業は従業員144名で、AI開発やデータ分析の専門家がいたわけでもない。そうした中小企業がDXを推進しようとすれば「外注」が現実的だが、切通氏はデータ分析・活用を内製化する「自走」のメリットを次のように説明した。
データ活用DX「自走化」のメリット
外注すれば早く結果が得られるうえ社内の業務担当者の稼働も増えないため、人手不足に悩む中小企業にとって短期的なメリットは大きい。だが、コストは嵩む。外部のデータサイエンティストに業務知識を提供したり、その専門家が分析した結果を解釈したりするにも難しさがある。
対して、自走型でデータ活用を行うと、担当者は自社のドメイン知識を活用できたり、金銭的コストを抑えられたり、DX文化を醸成できたりと長期的なメリットが大きい。この果実を得るには、プログラミングやデータ分析の知識を持つ人材を育成するという難しいチャレンジに挑まなければならない。
住吉工業が挑んだ「水質予測によって休日勤務を削減」
このチャレンジに挑んだ住吉工業は、どんな課題を抱えていたのか。
産業廃棄物の最終処分場における放流水は、環境省が定めるpHなどの水質基準を満たす必要がある。休日も含めて365日、従業員を派遣して点検を行い、水質データを収集。休日出勤による作業員の負担と人件費の増大に悩んでいた。
AIモデル開発の背景
そこで、蓄積したデータを使って水質の変化をAIで予測し、点検が不要と判断できれば従業員を派遣せず休日勤務の負担とコストを軽減しようというのが、今回の取り組みの目的だ。pHは降雨量などの複数要因で変動するため、「人手で予測するのは困難。水質データは15年分あったが活用できていなかった」(切通氏)。
水質日常点検を行っている地点
この目的達成に向けて、住吉工業はNode-AIを採用した。ブラウザ上でドラッグ&ドロップして、「前処理」「学習」といったカードを組み合わせるだけで予測AIを開発できる。NTT Comが人材育成を伴走支援することで、数カ月で水質予測AIモデルを開発し、評価に至った。
目標としたのは、複数ある測定箇所のうち1カ所について、2日後の水質(pH)を予測するAIモデルを開発すること。業務活用できる精度として平均誤差0.3以下を目指した。