日本科学未来館は2025年4月22日、展示内容のリニューアルに合わせてメディア向け内覧会を開催した。
今回のリニューアルでは、「量子コンピュータ・ディスコ」と「未読の宇宙」の2つの常設展示を新設した。日本科学未来館 館長の浅川智恵子氏は、「どちらも現在進行中の科学の大トピック。展示を通じて身近に感じてもらうことを目指した」と話した。
日本科学未来館 館長の浅川智恵子氏
“DJ”で量子コンピュータープログラミング 144量子ビットのチップ展示も
「量子コンピュータ・ディスコ」は、難解な量子コンピューターの原理を直感的に理解できるよう工夫された体験型展示だ。ミラーボールを設置しディスコをイメージした「ダンスフロア」では、DJ機材をモデルにした装置で量子コンピュータープログラミングが体験できる。
「量子コンピュータ・ディスコ」のDJ体験装置。テーブルの窪みに円形の「ゲート」のパーツを置く
この装置では、量子コンピューターのプログラミングにおいて「ゲート」の役割をするパーツを各ブースの筐体のテーブルに置き、DJのように楽曲の選択や音量の調整などを行える。タイミングが合えば、フロア全体に自分が選曲した楽曲を流すことも可能だ。
こうした操作は、「重ね合わせ」「位相」「もつれ」「測定」という、量子の性質を用いた計算方法をシミュレートしており、「このDJで学んだ操作は、本物の量子コンピューター(を用いたシミュレーター)を動かすときにも使える」(展示担当者)という。
子どもや外国人などの来場者にも量子コンピューターに触れてもらえるよう、「タッチポイントを豊富に用意」(展示担当者)したことも特徴。DJで選曲できる楽曲はエルガー「威風堂々」やアニメソングなど、有名曲を揃えた。また、「ギャラリー」エリアでは「推しの子」やビートルズのアルバムなど、さまざまなコンテンツから量子コンピューターの理解につながる解説展示も行っている。
「ラウンジ」エリアには量子コンピューター研究の歴史や原理を基礎から説明する展示を並べた。研究機関の協力により、研究の最前線を知ることができるのも特徴で、なかには理化学研究所量子コンピューター研究センターが提供した日本製の144量子ビットのチップが国内で初めて一般公開されている。
量子コンピューター研究の歴史を説明する展示の一部。中央のケースに収められているのが日本製の144量子ビットチップ
総合監修を担当した大阪大学 基礎工学研究科 教授の藤井啓祐氏は、「量子コンピューターは納得して理解するのがなかなか難しい分野だ。この展示が音や映像を通じて楽しみながら量子コンピューターを知るきっかけになれば」と期待を語った。