KDDIが出資するAdunaとは グローバルキャリア連合が目指す「5G収益化」の道

KDDIは2025年2月7日、AT&TやVerizon、Telefonica、Vodafoneら大手通信キャリアとエリクソンが出資する合弁会社Aduna(アドゥナ)への出資に合意した。名だたる12のグローバルキャリアが参画するこのAdunaは何を目指しているのか。KDDIは2025年2月21日に記者説明会を開催し、その狙いについて説明した。

12のグローバルキャリアが「共通API推進」へ結集

KDDIが2025年2月7日に出資を決めた合弁会社Adunaは、この共通APIの実装を推進することを目的としている。KDDIを含めて12の通信キャリアとエリクソンが出資。米国のAT&T、Verizon、欧州のDeutsche Telecom、Telefonica、Orange、T-Mobile、Vodafone、インドのBharti Airtel、Reliance Jio、東南アジアのSigtel、豪Telstra、メキシコのAmérica Móvilが名を連ねる

では、Adunaは具体的にどんな役割を担うのか。共通APIの策定と実装の流れを示したのが下の図表だ。

API標準化の取り組み

API標準化の取り組み

GSMA Open Gatewayはどのような共通APIを策定すべきかを議論し、そこで合意されたものについて、Linux Foundation傘下のオープンソースプロジェクト「CAMARA」がAPI仕様を規定する。このCAMARA APIの仕様に基づいて、KDDIら通信キャリアがAPIを実装。サービス開発者が利用する。

Adunaは通信事業者とサービス開発者の仲介役となることで、APIの実装を後押しする。松ヶ谷氏は、「この流れを加速させるために、KDDIはAdunaに出資した」と話した。

KDDIの2つの狙いとは

出資の狙いは大きく2つあるという。1つは、グローバルキャリアが連携することで、共通APIが世界中で活用できる環境を早期に構築することだ。

各キャリアごとの活動に任せていては「アクセルがかからない」(松ヶ谷氏)。どのようなAPIから規定していくのかというロードマップについても、Adunaを通じてコンセンサスを取ることで、仕様策定から実装までのスピード感が増すと期待する。

共通APIのグローバル展開を加速

共通APIのグローバル展開を加速

Adunaは上図表のように、アプリ/サービス開発者が利用するCPaaS(Communication Platform as a Services)事業者と複数キャリアとの仲介役を担う。

具体的には、APIを利用するためのクレジットをAdunaが通信キャリアから購入し、「例えば北米3キャリアのAPIを束ねた状態で、ハイパースケーラーやCPaaS事業者に扱ってもらえるようにする」。CPaaS事業者やアプリ/サービス開発者は、個別のキャリアと契約や手続きを行う必要がなく、それら煩雑な作業をAdunaに集約することができる。

もう1つの狙いは、国内パートナーの海外展開を支援することだ。「共通APIを使って国内で良いサービスができれば、そのまま海外に展開しやすい」(松ヶ谷氏)。

国内パートナーの海外展開を支援

国内パートナーの海外展開を支援

ただし、こうしたビジネスを展開していくには、さらなるエコシステムの拡大が必須だ。松ヶ谷氏も「国内でKDDIだけだと厳しい」と述べ、NTTドコモやソフトバンク、楽天モバイルらにもこの枠組みへの参加を呼びかけていきたいとした。

不正利用防止・本人確認から活用広がる

共通APIを活用することで、どんなサービスが可能になるのか。すでに商用化されている例として松ヶ谷氏が挙げたのが「KYC API」「Number verification API」だ。

商用化済みのAPI活用例

すでに商用化されているAPI活用例

KYCとは、Know Your Customerの略で、通信キャリアが保有する加入者の属性情報のこと。KYC APIを使うことで、KYC情報を使った本人確認が行える。Number verification APIも同様に、電話番号を使った認証を行うもので、これらを組み合わせることで二段階認証が可能だ。

自治体でオンラインでの本人確認に使用されており、オンラインバンキングやECなどでの活用も可能だ。

一方、将来的に活用が期待されるものとして挙げたのが「QoD API」である。Quality on Demandの略で、いわゆる優先制御を行うものだ。特定のアプリ/サービス向けに、一般的な通信とは差別化された高品質通信を提供する。映像伝送やXR、ゲームなどでの活用が考えられる。

QoD APIの活用イメージ

QoD APIの活用イメージ

通信の優先度をオンデマンドに切り替えるという5G特有の機能を使うため、5Gマネタイズにおいて非常に大きな期待が寄せられているAPIだが、松ヶ谷氏は「カジュアルに使っていただくには、まだ技術的な課題を解消しなければならない」と話した。実証を重ねることで、できるだけ早い商用化を目指すという。

現時点ですでに30種類以上の共通APIが規定されており、本人確認や不正防止といった領域から商用化が進んでいる。米国や欧州、インドではすでに複数キャリアが参画しているが、国内でも5Gを活用したビジネス開発を後押しするため、KDDI以外の参画が待ち望まれるところだ。

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