ボーダフォンのM2M戦略「我々だけが“グローバルM2M”を実現」

ボーダフォンは約2年前からM2M事業に特化した専門組織をグローバルに展開している。アジア太平洋地域(APAC)を統括するエカーブ氏に、M2Mビジネスにおける同社の強みと今後の戦略について聞いた。

“持ち家”と“借家”の違い

――M2Mは有力市場であり、通信キャリアをはじめ多くの競合がいます。ボーダフォンの強みは何でしょうか。

エカーブ まず重要なのは、我々がM2Mに特化した専任の組織をグローバルに展開していることです。

M2Mに用いるネットワークは携帯電話のサービスで使うものと同じですが、それ以外の要素は従来の事業とはまったく別物です。収集したデータを活用するITシステムやアプリケーションを開発・運用するノウハウ、サポート機能など、M2Mを運営する専門的な人材が不可欠です。

さらに、グローバルに“1つの契約”でM2Mソリューションを提供できるという点も大きな強みです。言うまでもなく、M2Mの最も重要な要素はコネクティビティですが、我々は30カ国に自社のネットワークを持ち、その他40カ国のキャリアとパートナーシップ契約を結んでいます。単なるローミングでは実現できない密な連携が可能です。

加えて、SIMカード、M2Mプラットフォームやサポートサービスの提供も、ITシステムのインテグレーション、通信デバイスの検証等もすべて1つの窓口で行います。これは、M2Mを活用したいと考える企業にとって大きなメリットです。

従来は市場ごと、国ごとに異なるモバイルオペレーターと個別に交渉しなければなりませんでした。ITシステムのインテグレーションやサポート体制についても同様です。非常に煩雑で、M2Mを使ったサービスをグローバルに展開するのは事実上不可能でしたが、世界中にモバイルネットワークとM2Mビジネスの体制を持つボーダフォンなら、それを解決できます。

――ネットワークについて、ローミングとは具体的にどう異なるのですか。

エカーブ 単にデータを送れるだけでなく、「ネットワークを制御できる」ことがM2Mでは重要なのです。

お客様の中には、今後10年間使い続けられるM2Mソリューションを求める方もいます。10年後にどういったモバイルの技術が使われ、適切なサポートが担保されるのか否か、先を見通したいのです。

また、ネットワーク品質やサービスレベルの保証、問題が生じた際のサポートやパッチの適用などにおいても、“借り物”のネットワークと自社保有のネットワークでは対応力は当然異なります。リフォームが自在にできる持ち家と、手を入れられない借家との違いに置き換えるとわかりやすいでしょう。

パートナーのネットワークも含めて、世界70カ国に制御可能なネットワークを持つ。これは我々にしかない強みです。

そして、この世界中のネットワークを横断的に利用できるM2Mプラットフォームも、ボーダフォンが独自に開発したものです。M2Mに必要な機能を我々自身が開発できます。ネットワークとプラットフォームのどちらも、お客様の要請に応じた形でコントロールできる。これが、我々の戦略上、最も重要なポイントです。

それ以外の要素、ITシステムやアプリの開発などに関しても、SIer等とのパートナーシップによって、お客様を全面的にサポートしています。

日本企業に“次のビジネス”を

――日本にAPACの本部を置く理由と、今後の国内での展開について教えてください。

エカーブ 日本には、産業用機械や工業製品のメーカー、輸出産業のリーディングカンパニーが多くあります。これが本部を置いた理由です。

我々は自動車、家電、産業用機械の3つのセグメントでM2Mビジネスを展開しようとしており、特に産業用機械の分野で我々は優位な立場にいると自負しています。開発・製造力に優れる日本のメーカーは最先端の製品を持っていますが、競争の激化によって、そこから得られる収益は圧迫されつつあります。

目下の最優先課題は、そこにサービス収益を追加し、製品販売への依存度を相対的に下げることにあります。また、エンドユーザーとより密接な関係を構築することも必要です。

我々は、こうした日本企業の課題解決に貢献できます。M2Mソリューションの提供はもちろん、他国の先進的な事例から得られた知識やノウハウをお伝えすることも可能です。

M2Mを活用してグローバルにサービス展開したい、エンドカスタマーとの関係を強化したいと考えている日本企業をサポートしていきます。

月刊テレコミュニケーション2012年11月号から再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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