手厚い運用代行サービスなどを評価してKDDIを選択
iPhoneのキャリアにはKDDIを選択した。通信エリアの広さや通信品質の良さ、過去の取引を通じての信頼感、そして充実した運用サービスなどが決め手になったという。
「運用代行なども含めたトータルでのサービス内容や料金を比較した結果、KDDIのほうが手厚いサービスをしてもらえると判断した」(大串氏)。東京スター銀行では、ヘルプデスクやMDM(モバイルデバイス管理)の操作、キッティング(端末設定)作業など、iPhoneの運用業務を基本的にKDDIへアウトソーシングしている。
ここで東京スター銀行が5月に導入したシステムの概要を整理しておこう(図表)。iPhoneからExchangeサーバーへのアクセスには、マイクロソフトがモバイルデバイス向けに提供しているExchange ActiveSyncを活用。iPhoneにはデータを残さず、メールとスケジュールを利用できる。また、Exchangeサーバーとの間はインターネットVPNで接続している。
図表 東京スター銀行のシステム概要 |
高セキュリティを担保するため、MDM(モバイルデバイス管理)製品も活用している。採用したのは、インヴェンティットの「MobiConnect」。ユーザーによる設定プロファイルの削除が不可能などの特徴を有したMDM製品である。自営システムとして導入しているが、その運用は前述の通りKDDIに委託している。
利用しているMDMの機能は、リモートロック・ワイプ、ポリシー配布のほか、カメラ機能やApp Storeの利用制限など。さらに、KDDIのURLフィルタリングサービスを利用し、業務に不要なWebサイトへのアクセスも制限している。
大串氏によれば、「セキュリティ面を最も重視しているため、かなり厳しい制限を一律にかけているが、今後はニーズなどを踏まえつつ、安全性を慎重に確認しながら少しずつ使える機能を広げていくことも検討したい」そうだ。
次のステップはタブレット導入とCRMのモバイル活用
iPhone導入を皮切りに、ビジネス改革をスタートさせた東京スター銀行。次のステップとして控えるのは、年度内に計画されているタブレットの導入とCRMの刷新だ。
メールとスケジュールに加えて、顧客情報も外出先で見られるようにするほか、iPhoneでは画面サイズなどが十分でない人にはタブレットも支給してい く。さらにはインテルが最近提唱している薄型軽量ノートPCの新カテゴリ「Ultrabook」の導入も検討中で、「スマートフォン、タブレット、Ultrabookが3本柱。目的に応じて、必要なデバイスを支給していく」(村山氏)という。
iPhoneをはじめとするモバイルデバイスに対する村山氏の考えは、「電卓などと同じ一種の“文房具”。外で働く人にとって今や必須のコモディティ」というものだ。ただその一方で、「全員に持たせる必要はなく、メリハリを付けて支給する」ことも大切にしている。
iPhoneに関しては2012年10月時点で180台が配布済みで、これから最大で350台まで拡大する予定だ。
iPhone導入から約半年、村山氏は「コストも含めて期待通りの効果が出ている」と振り返る。そして、iPhoneを端緒に始まった一連のビジネス改革の成功についても、自信を深めているところだという。