――今年は前半に700/900MHz帯の割当が決まるという電波行政にとって大きな出来事がありました。当事者の立場からどのように評価していますか。
鈴木 競争状況を作るという意味で、今回の割当はうまくいったと思っています。これまで帯域ごとに新規参入事業者を募ってきましたが、結果的に700/900MHz帯のプラチナバンドを各社にバランスよく割り当てられ、競争条件も等しくなりました。
また、LTEの最大通信速度150Mbpsを出すには20MHz幅が必要で、足りない場合には少し離れた周波数を集める「キャリアアグリゲーション」技術を使いますが、基本的に一事業者が20MHz幅を持てるようになったことで、FDD方式にしろTDD方式にしろLTEサービスの高度化が実現しやすくなりました。
問題は国内市場が“ガラパゴス”と呼ばれていることで、これは周波数だけではいかんともしがたいものがあります。ただ、700/900MHz帯の割当では周波数の上り/下りとも国際バンドに合わせたので、国内の端末を海外市場で使うこともできますし、海外企業をM&Aした時に国内のサービスをそのまま海外で提供することも可能になります。国内市場は少子高齢化が進み、今後は縮小することから、これを機に積極的に国際展開を進めてもらえればと考えています。
――700MHz帯は3社に割り当てられたましたが、円滑に移行できるかどうかも課題です。
鈴木 900MHz帯は1社に割り当てているので、既存の免許人に期限内に移動していただければ問題ないのですが、700MHz帯は地デジのブースター(増幅器)への干渉という問題があります。地デジの受信機が770MHzまで受信する仕様になっているために、放送が行われていない710MHz以上の地域でも干渉が起こる可能性があります。基地局建設のための調査で電波を出すと、ブースターが受信してノイズも一緒に増幅してしまうので、もぐらたたきのように細かく対応しなければならず大変です。
しかも700MHz帯は3社に割り当てているので、共同で取り組まなければなりません。逆に、うまく協調できれば各社の負担が減り、移行も早期に実現するはずです。
――外資系ベンダーからは、700MHz帯の一部に世界共通の“国際バンド”の追加割り当てを求める声もあります。
鈴木 確かに、テレビ1チャンネル分の周波数があれば、グローバルに対応した機器を日本市場に投入できるという意見が聞かれます。しかし、今はようやく割り当てが終わったばかりなので時期として適当ではなく、将来的に必要性があればあらためて検討の対象になるということでしょう。