米国のネット中立性は果たして復活するか 2024年オープンインターネット命令[前篇]

インターネット上の様々なトラフィックは公平に扱われ、優先されたり遮断されてはならないとするネットワーク中立性の考え方。米国における中立性ルール復活の動きを全2回で詳しく解説する。

4.バイデン政権における難航

バイデン政権の発足した2021年1月20日をもってパイ委員長が退任し、民主党出身のジェシカ・ローゼンワーセル委員が委員長代行となった。

バイデン政権はまず、ネットワーク中立性に関する基本スタンスを示した。2021年7月9日、バイデン大統領は、FCC委員長(当時は代行)に対して、2015年オープンインターネット規則と同様のネット中立性ルールを、適切なルールメイキングを通じて採用することを検討するよう促した。

そして秋には、FCCの人事の一連の承認に向けた動きが始まったのだが、これが大変長いプロセスとなった。10月26日にバイデン大統領は、FCCの委員長にローゼンワーセル委員長代行を指名、また、パイ委員長の委員辞任で欠員となっている委員に、民主党出身のジジ・ソーン氏を指名した。

ローゼンワーセル委員長の上院承認は12月7日に行われたが、ソーン氏の承認手続きが難航した。上院の商業・科学・運輸委員会は、ソーン氏の承認公聴会を12月1日、2022年2月9日、2023年2月14日と3回開催した。第1回は比較的穏やかに進行されたように見えたが、第2回、第3回は、リベラルと指弾されたソーン氏の過去の言動を激しく攻撃する共和党議員とソーン氏の応酬が続くものとなった。

こうして、委員長の承認からも1年以上もの間、FCCの委員は、民主党・共和党2名ずつの4名の状態のままであった。党派制のある議論では、過半数を制する側がないので、議案の可決は見込めない状態が続いていた。そういった中、ソーン氏は、2023年3月7日、FCC委員指名の辞退を発表するに到った。

これを受けて、5月22日、バイデン大統領は、今度はあらためて、オバマ政権時代の商務省NTIA長官代行で、当時国務省の上級顧問だったアンナ・ゴメズ氏をFCC委員に指名した。今度は承認の過程が比較的円滑に進んだ。9月7日、ゴメズ氏のFCC委員の5年間の任期(2021年7月1日からということになっている)の承認が上院で55対43(棄権2)で可決された。

ようやくFCCの5委員が揃ったことを歓迎する声明をローゼンワーセル委員長が出したのが、2023年10月1日のことである。バイデン政権の発足から、実に2年8カ月余りが経っていた。

そこからのローゼンワーセル委員長の動きは迅速だった。彼女は、すでに9月26日の時点で、10月の委員会会合に通信法タイトル2に依拠した2015年ルールへ回帰するルールを提案すると発表しており、実際に10月19日の委員会会合で、規則制定提案公告を決定し、意見募集を開始した。

そして、2024年4月25日の委員会会合で、2024年オープンインターネット命令が、賛成3名(民主党側)、反対2名(共和党側)で決議された。

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