離島のエネルギー問題を解決
自営系LPWAの1つであるWi-SUN FANは、スマートメーターに多く採用されてきたが、地球規模で高まる脱炭素化という課題を解決するために、新たな取り組みが始まっている。
それがエリアアグリゲーションだ。エリアアグリゲーションとは、小規模なスマートグリッドを指す。Wi-SUNアライアンスでは、太陽光発電装置を持つ各家庭にIoTゲートウェイを設置し、地域全体のエネルギーの制御を司るエリアアグリゲーションシステムの普及に取り組んでいる。
このシステムは、電力会社からの出力制御要請を各家庭に伝え、発電量をコントロールする。これまで送電網の容量を超えて発電した電力は廃棄するのが一般的だったが、これにより発電の無駄をなくし、また余剰電力を給湯器に供給したり蓄電池に貯めたりといった利用も可能だ(図表2)。
図表2 エリアアグリゲーションシステム
すでに沖縄県宮古島市では2000戸の電力調節ネットワークを構築しており、そのなかでも来間島の約半数の世帯では、電力会社から送電を受けなくても各戸相互で融通できる高度な電力容量の共有を実現している。
IoTゲートウェイと家庭に設置された発電機や蓄電池などの機器との接続にはHEMS向けのWi-SUN Bルートを、IoTゲートウェイとインターネットとの接続には閉域網LTEを使用しているが、日新システムズの和泉吉浩氏は「将来的にはエリアをカバーするネットワークをWi-SUN FANで構築したい」と話す。
日新システムズ システム・ソリューション事業部 営業部 西日本営業グループ 主査 和泉吉浩氏
各家庭とインターネットをWi-SUN FANで接続できれば、災害時等にLTE基地局が停電した場合でも稼働し続けることができ、より強靱かつ柔軟なエネルギー網を構築できる。条件が悪く光熱費が高くなりがちな離島のような環境でも、エネルギーの地産地消を達成し、コスト削減と脱炭素を同時に達成できる可能性があると和泉氏はみている。