<特集>IoT×AIで伸ばす!「IoT×生成AI」5つの活用法 生成AIがIoTを次のステージに

これまで10年以上にわたり、データドリブンな意思決定を実現するために実装が進んできたIoTとAI。生成AIはそれを大きく進化させ、「IoT×AI」の適用範囲を広げるエンジンとなる。

デジタル化をブーストする

IoTの活用領域はこの10年で確実に広がったが、多くのケースでは、データの可視化や異常検知などに留まっている。むしろ、異種データの統合に苦労していたり、映像も人が監視していたりと停滞感が蔓延している。

だが、データの入力や統合を自動化し、操作まで簡便化できるとなれば、IoT×AIの活用範囲は広がる。

こうした使い方は、企業活動やビジネスの「デジタル化をブーストする」ものとして、ガートナージャパン リサーチ&アドバイザリ部門 バイス プレジデント アナリストの池田武史氏も期待を寄せる。「データを分析し、意思決定をするための一翼を担う重要なテクノロジーだ。技術に明るくない人でもテクノロジーを使えるようにする、UIとしても使える」

ガートナージャパン リサーチ&アドバイザリ部門 バイス プレジデント アナリスト 池田武史氏(写真:野潟秀之)

ガートナージャパン リサーチ&アドバイザリ部門 バイス プレジデント アナリスト 池田武史氏(写真:野潟秀之)

IoTにAI、機械学習、5G、そして生成AIと新たなテクノロジーが次々と台頭してきているが、企業がそれらを活用してデジタル化を進める目的はここ10年変わっていない。「より良い意思決定、判断、提案をタイムリーに行うこと」(同氏)だ。前述の5つの活用法が示す通り、生成AIは、これまで人手で行ってきた取り組みを代替して「きれいに仕上げる」助けとなる。

事前学習なしで予想以上の成果

IoTと生成AIを組み合わせることで、具体的にどんな成果が得られるのか。ソラコムでCTO of Japanを務める松井基勝氏が「想定以上の成果が得られた」と話すのが、三菱電機、松尾研究所と行った空調機器制御の実証だ。

ソラコム CTO of Japan 松井基勝氏

ソラコム CTO of Japan 松井基勝氏

目的は「部屋を最適な温度に保ちつつ、可能な限り電力消費量を削減する」こと。センサーで取得したオフィス内の環境データや、勤務者から得た快適情報のフィードバックを生成AIに入力。最適温度の予測と空調機の制御を行った結果、約3カ月の実証期間の平均で48%も電気使用量を削減できた。

使用したのは、Open AIのGPT-4/4V。「事前学習やチューニング、RAGも使ってない状態で空調制御をやってみたら、結構うまくいってしまった。生成AIが、こうした用途に非常にマッチしていることが再確認できた」と松井氏。事前プロセスに時間・コストをかけることなく省エネ効果が確認できたうえ、快適性についても平均26%の改善効果が見られたという。

多様なデータを組み合わせて用いている点も注目だ。マルチモーダル基盤モデルを用いて、室内温度のヒートマップやオフィス内の画像から勤務者の数、位置・分布情報を取得。外部の天気情報から得られた環境データ、勤務者から収集した快適性フィードバックなど様々なデータを、環境センサーで得た室内温度・湿度と組み合わせている。

この結果を受けて松井氏は、生成AIをうまく組み合わせることで、PoCやトライアルのハードルが下がると期待する。従来であれば、必要なデータを集めて整形したり、適正温度の予測・制御を行うAIを学習させるプロセスが不可欠だったが、「生成AIなら、その時間をかけなくても、(快適性と電力消費量のバランスといった)常識やロジック、業務知識などを組み合わせて、『とりあえずやってみよう』でも、ある程度の成果が出てしまう」。

上記以外にも生成AIを使ったトライアルは行われている。今後、次々と新たな用例と成果が発表されるだろう。

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