<特集>オール光ネットワーク最新動向オール光化は通信事業者だけじゃない! データセンターや企業ネットも光で変革 

“光の得意技”をもっと活用しよう──。これは何も通信事業者インフラに限ったものではない。むしろ、データセンターこそが主戦場だ。企業等のLANでもオール光化が進行してきている。

トラフィックの激増と省エネ要請の狭間にあって、大容量・省エネ伝送が得意な光通信に期待するのは、通信事業者だけに留まらない。むしろ、データセンター(DC)ネットワークこそ「光の領域拡大」の主戦場だ。新技術導入へのトライが繰り返されている。

もう1つ見逃せないトレンドがある。企業のオフィスや工場、商業施設等の構内LANにも、オール光化の波が押し寄せてきている。

本稿では、DC間接続(DCI)およびDC内ネットワークとキャンパスLANにおいて、光を効果的に活用する方策を紹介する。

AI需要で1.6Tも早期に

最初に、光伝送システム/光ファイバー市場のトレンドを押さえよう。

この市場の成長を牽引しているのは今や、通信事業者ではなくDC/クラウド事業者だ。

「光通信関連機器市場」(図表1)に詳しい富士キメラ総研 第二部の川原雄亮氏によれば、通信事業者とDC/クラウド事業者で投資状況はくっきりと分かれる。「どちらも2023年は需要が減少したが、DC側はAIの需要によって投資が回復し始めている」。対して、「テレコムは5G投資が一巡し、光への追加投資は鈍い。それよりも、衛星通信を活用してカバレッジを広げる方向へシフトしている」。

図表1 光通信関連機器・デバイスの世界市場(2023年11月9日発表)

図表1 光通信関連機器・デバイスの世界市場(2023年11月9日発表)

こうしたなか、DCでは400Gから800G、そして1.6Tの光伝送技術の導入が順調に進むと見られる。中でも順調な伸びが期待されるのが光トランシーバー市場だ(図表1・左)。「特に短距離。800Gの導入が順調で、1.6Tも今年中に使われ始める。DCIの領域でも400GZRの導入が伸び、800GZRは来年頭と見られる。ここの立ち上がりがすごく速い」(川原氏)

富士キメラ総研 第二部 川原雄亮氏

富士キメラ総研 第二部 川原雄亮氏

400Gの導入が始まったばかりでもう800G、さらに1.6Tを待望する声が聞かれるのは、やはり生成AIの影響だ。

複数のGPUサーバーをつなぎ合わせたGPUクラスターで分散学習を行う場合、そのインターコネクトには400Gないし800Gbpsの高速性が必要になる。早晩、1.6Tbpsの需要も顕在化するはずだ。日本シエナコミュニケーションズ 執行役員 システムエンジニアリング本部長の今井俊宏氏は、「DC内の短距離なら、1.6Tbpsも容易に出せる。プラガブル光トランシーバー(以下、プラガブル)で現状が800G、次世代で1.6Tになる」と話す。

同社はこれまで通信事業者インフラやDC間といった中・長距離伝送が主ターゲットだったが、今後はプラガブルでDC内にも進出しようとしている。短距離伝送の領域でもベンダー間競争が熾烈化しそうだ。DC/クラウド事業者にとっては、新技術を活用しやすい環境となることが期待される。

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