LTEの音声対応の最終形となるIMS(IP Multimedia Subsystem)ベースのモバイルIP電話「VoLTE(Voice over LTE)」によるサービスが、いよいよスタートする。
先陣を切るのが、3GでCDMA2000方式を採用している海外の3事業者だ。(1)米国最大の携帯電話事業者で2010年末にLTEサービスを開始したベライゾン・ワイヤレス、(2)同年9月にLTEを導入した米国第5位のメトロPCS、(3)昨年7月にLTEの展開を開始した韓国のLGUプラスが、2012年中にサービスを開始する見込みだ。
2013年には、米AT&Tや北欧のテリアソネラなど相当数の事業者がVoLTEの導入に踏み切ると見られている。日本でもNTTドコモが2013年にVoLTEを導入する計画と報じられており、今年3月にLTEを導入したイー・アクセスも2013~2014年にサービスを開始する意向だ。
CDMA2000陣営がVoLTEを牽引
回線交換(CS)機能を持たないオールIPの通信システムであるLTEでは、本来、電話はVoIPで実現することが前提となっている。
しかし、LTEのサービスエリアが2G/3G並みに広がるのには時間がかかることなどから、過渡的なシステムとして「CSフォールバック(Circuit Switched Fall Back)」が開発され、ドコモのスマートフォンなどで用いられている。音声通信は3G網に委ね、端末がLTE網に接続されている場合は、通話時に回線を3G側に切り替えるものだ。
VoLTEは、このCSフォールバックの後継となるモバイルIP電話の標準規格である。欧米の携帯電話事業者やベンダー12社により、LTE上での電話/SMSサービスの実現を目的に2008年に設立された「One Voiceイニシアティブ」の活動を継承する形で、2010年2月からモバイル通信の業界団体GSMAに設けられた「VoLTEイニシアティブ」で規格策定が進められている。
図表1 LTEの音声通信対応 |
ここに来て携帯電話事業者の間にVoLTE導入の機運が高まってきたのには、大きく3つの要因がある。
1つは、CDMA2000事業者を中心とした「脱3G」の動きだ。北米を中心に使われている3G規格のCDMA2000は、W-CDMA/HSPAに比べて導入事業者が少ないため、今後ビジネス展開が難しくなることが懸念されている。そこで最大手ベライゾンを中心にLTEへの移行を進め、CDMA2000を早期に手仕舞いしてしまおうとする動きが広がっている。これらの事業者が、VoLTEの早期導入を牽引しているのである。
OTTとの差別化策にも
2番目の要因は、VoLTEの導入により、携帯電話のサービス性を大幅に向上させることが可能になることだ。