(左から)東京都中小企業振興公社 事業戦略部 経営戦略課 課長代理 望月伸快氏、同課 主事 三浦将司氏、同課 課長 河野浩邦氏
少子高齢化に伴う人材確保や技術継承、脱炭素化への対応など、様々な課題に直面している製造業。そんな製造業にとって救世主となりうる技術が、ローカル5Gだ。ローカル5Gを活用してロボットの遠隔制御や若手従業員へのリモート作業指示等が可能になれば、工場内の生産性は大幅に向上するだろう。
ただ、ローカル5Gの導入にはコストの高さや運用・管理の難しさなどの問題が立ちはだかる。資金力に余力のある大手企業ならまだしも、数千万~数億円とも言われるローカル5Gにかかる初期費用を中小企業が捻出するのは容易ではない。
そこで東京都と東京都中小企業振興公社は2021年、中小規模の製造業を対象にした助成金事業「5Gによる工場のスマート化モデル事業」を実施した。ローカル5Gを活用し、モデルケースとなるような先駆的な取り組みを行う中小企業に対し、最大1億2000万円の助成を行うというものだ。ローカル5Gの導入・運用費用に加え、免許申請費等も助成対象となり、助成対象経費の最大5分の4を支援した。
同事業では、3社の中小企業が採択された。複合機部品等の表面処理加工を手掛けるヱビナ電化工業(現EBINAX)は、高精細カメラとAIを活用した作業現場での遠隔管理・遠隔指導や、流量計や振動計のデータのリアルタイム検知にローカル5Gを活用し、さらなる生産性の向上に取り組む1社だ。
ヱビナ電化工業(現EBINAX)の事例(出典:東京都中小企業振興公社)
工業用クロムめっき加工を行う大森クローム工業は、ローカル5Gと高精細カメラを用いて不適合品を自動判定する外観検査システムを導入。自動車部品メーカーの武州工業も、ローカル5Gとカメラを活用して部品のキズを自動で検知するAI検査装置を実用化した。
こうした実績を踏まえて、今年7月、新たな助成金事業「5Gによる製造工場のDX・GX推進事業」がスタートした。「ローカル5Gの活用は現時点でも実証段階であり黎明期を脱していない。そこで新たにDXとGXの要素を加えて、中小企業を引き続き支援していく必要があると考えた」。東京都中小企業振興公社 事業戦略部 経営戦略課長の河野浩邦氏は、新事業の狙いをこう語る。