<特集>宇宙通信のこれから衛星データの“使い道” 農業や防災、不動産など多様な業界で活躍!

一般企業にとって利活用のハードルが高かった衛星データ。衛星データや分析ツールを一気通貫で提供するプラットフォーム「Tellus」などの登場により、農業や防災を中心にユースケースが広がりつつある。

イーロン・マスク氏率いるスペースXを筆頭に、民間企業・スタートアップによる宇宙関連事業への参入が相次いでいる。内閣府によると、2022年に軌道上へ打ち上げられたグローバルの人工衛星数は2368機。過去10年間で約11倍に急増した。うち80%以上を商用衛星が占める。

これに伴い、人工衛星から取得したデータをビジネスに活かす動きも徐々に出始めている。「これまでは他国の動向の偵察等のような政府・軍事利用に衛星データが使われていたが、商業利用も拡大傾向にある」。こう話すのは、日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 マネジャーの加藤大樹氏だ。

日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 マネジャー 加藤大樹氏

日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 マネジャー 加藤大樹氏

調査会社のPanorama Data Insightsによると、グローバルの衛星データサービス市場の2021年から2030年のCAGR(年間平均成長率)は22.2%。2030年には458億米ドル(約7兆2000億円)に市場規模は到達すると予想されている。

衛星データには様々な種類があるが、「商業利用では光学センサーとSARセンサーから取得したデータが主流になる」(加藤氏)という(図表1)。

図表1 光学センサーとSARセンサーの特徴

図表1 光学センサーとSARセンサーの特徴

光学センサーは太陽光の反射を観測するセンサーで、「デジタルカメラで撮影したものと同じような写真を撮れる」。つまり、対象物の色や大きさ、形状などが明瞭に見える点が特徴だ。

一方、光学センサーは夜間や雲がかかっている時間帯は撮影できない。この短所をカバーできるのが、SAR(合成開口レーダー)センサーである。SARでは、センサーから発射したマイクロ波の跳ね返りを観測する。マイクロ波は雲を透過するため、悪天候時でも地表を観測できる。また、太陽光の影響を受けないため、同じ条件で撮影した写真の比較を行いやすいというメリットもある。

衛星データPFの登場

衛星データをビジネス活用するにあたっては、データの収集から分析までを一気通貫で行う必要があるが、これを実現するのが、「衛星データプラットフォーム」だ。さくらインターネットより分社化し2024年4月より本格的に操業を開始した株式会社Tellus(テルース)は、衛星データプラットフォーム「Tellus」を提供している。

2024年5月末時点でのTellusのアカウント登録者数は3万8000人を超える。「内訳として一番大きな割合を占めるのはICT業界。宇宙産業以外の新しいユーザーにもリーチできている」とTellus 代表取締役社長の山﨑秀人氏は胸を張る。

Tellus 代表取締役社長 山﨑秀人氏

Tellus 代表取締役社長 山﨑秀人氏

Tellusが取り扱うデータは、経済産業省が開発した「ASNARO-1」と呼ばれる光学データ、JAXAが開発した地球観測衛星「だいち2号(ALOS-2)」から取得したSARデータや、高解像度の標高データ「ASTER GDEM(全球3次元地形データ)」など多岐にわたる。衛星データは、種類によっては100万円を超えるケースもあり、コスト面もデータ活用の障壁の1つになっていたが、今挙げたデータはTellus上ですべて無料でトライアルできる。

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