スマートフォンの登場以来、モバイルアプリケーション/サービスは多様な進化を遂げてきた。画面には多くのアイコンが並び、クラウドには私たちが使い切れないほどのサービスが並んでいる。
こんな世界が現出したのは、クラウドと端末が“プログラマブル”だったからだ。API(Application Programming Interface)が提供されることで、アプリ/サービス開発者はクラウドや端末の機能を自由に組み合わせて価値を創造してきた。
それとは対照的に一向に変わらなかったのが、クラウドと端末をつなぐモバイルネットワークだ。4Gも5Gも、外部から機能や性能をいじることはできない。“プログラマブル”とは程遠く、どれほど広帯域になろうとも単にトラフィックを流すパイプに過ぎなかった。
世界中のMNOが「共通API」
もし5Gネットワークがプログラマブルに、つまり外部からAPIを通じて制御可能になればどうなるか。アプリ開発者は、より付加価値の高いユースケースやサービスを作り出すことができる。
5Gの商用化から4年余り、ネットワーク機能を外部に公開するAPIの準備が世界中で活発化してきた。エリクソン・ジャパン CTOの鹿島毅氏は、「アプリやクラウドと合わせてコンフィグできるように、ネットワークもAPIを公開する。それによって、エンドツーエンドで全体をプログラマブルにする」とその意義を述べる。
契機となったのが、2023年2月。5Gネットワークの機能と通信事業者(MNO)が持つ情報をアプリ開発者や企業に提供し、アプリ側からネットワークの制御や情報取得ができるようにするための共通APIを規定するフレームワーク「GSMA Open Gateway」がスタートした。共通APIを媒介に、世界中のMNOとアプリ/サービス事業者が密に連携したビジネスモデルを確立するのが狙いだ。
発足時からこの枠組みに参画したMNOの数は21。米AT&Tとベライゾン、欧州ではドイツテレコム、オレンジ、テレフォニカ、ボーダフォン、アジアはKDDI、Singtel、中国移動などが名を連ねた。
1年を経て、その勢いは増している。GSMAによれば、2024年2月時点でAPIを公開、または公開を予定しているのは「42のMNOグループ、237のモバイルネットワーク」に及ぶ。