ERPパッケージベンダーの日本インフォア・グローバル・ソリューションズは2012年1月17日に記者説明会を開催し、スマートフォン/タブレットから同社のERPなどを利用可能にするプラットフォーム「Infor10 Motion」と2つのモバイルアプリケーションを発表した。最大手のSAPをはじめ、最近ERPの世界でもモバイル対応の動きが加速しているが、インフォアも取り組みを本格化させたことで、ユーザー企業サイドの導入機運もさらに高まっていきそうだ。
ERPなどをモバイル環境で活用するためのプラットフォームであるMotionは、(1)Infor10 Motion Server、(2)Infor10 Motion App Manager、(3)Infor10 Motion Builderの3つのコンポーネントから構成される。Motion Serverはバックオフィス側とやり取りする役割。オンプレミスではなくクラウドサービスとして提供される。2番目のApp Managerは、ユーザーを管理したり、個々のモバイルアプリケーションにセキュリティルールを適用するための管理ツールだ。ユーザー企業やSIerなどで開発したサードパーティアプリも管理できる。そして3番目のBuilderはアプリ開発者向けのSDKで、インフォアでは開発者コミュニティ作りにも力を入れていく考えだという。
「ERPは非常に大きなアプリだが、モバイルの世界では小さく作っていく」。執行役員 ビジネスコンサルティング本部長の植木貴三氏はこう説明したが、ERPのモバイル活用と言っても、ERPの機能すべてをモバイルアプリ化するわけではない。目的・用途毎にモバイルアプリを開発。そしてMotion Serverを介してモバイル側で必要なデータを取り出すという形だ。
日本インフォア・グローバル・ソリューションズ 執行役員 ビジネスコンサルティング本部 本部長の植木貴三氏 |
なお、Motion ServerとERPなどを接続するインターフェースとなるのがミドルウェアの「Infor10 ION」だ。IONは、インフォア製品にとどまらず、SAPやマイクロソフトなどのビジネスアプリやモバイルデバイスのデータをつなぐ「単一の統合ポイントになる」(Infor10 Motion部門 プロダクトマネージャーのニック・ボーズ氏)とのこと。すなわちビジネスに必要な様々なデータをION経由で取り出し、モバイル環境で活用するためのプラットフォームがMotionとなる。
モバイルデバイスから「単一の統合ポイント」経由でERPを活用できる |
それではインフォアでは、どのようなモバイルアプリを提供していくのか。まず登場するのが「Road Warrior」と「ION Pulse」の2つだ。Road WarriorはSFA(営業支援)のためのアプリで、BIツールによる顧客分析情報の閲覧やコンタクトリストなどの機能を備える。コンタクトリストから直接Skypeで連絡することも可能だ。また今後、株価情報やSNSなどの外部アプリとの連携をさらに強化していく方針だという。ちなみにRoad Warriorの利用にIONは必須ではなく、米国での1ユーザー当たりの利用料金は年額90ドルである。
SFAアプリであるRoad Warriorのデモ画面。左側に表示されているのは、担当する顧客企業の位置情報。アイコンをタップすると、右側に売上実績などのBI情報が閲覧できる |
次のION Pulseはワークフローシステム用のアプリで、様々な条件で申請/承認案件をフィルタリングできるのが特徴とのこと。ION Pulseの利用料金は無料だが、その代わりにIONの導入が必須となっている。
インフォアではさらに2012年中に、フィールドサービス用や人事マネージャー用、生産・製造部門のマネージャー用、ホワイトボード機能などのモバイルアプリをリリースしていく予定だ。ボーズ氏は同社のモバイル戦略のユニークな点として、「いわゆるモバイルユーザーだけでなく、生産・製造現場などの社内でモバイルを使っているユーザーにもフォーカスしていること」を挙げている。
Motionと2つのモバイルアプリの提供開始は1月から。まずはiPadに対応し、2月にはiPhoneにも対応するという。また、日本語に加えて、英語、中国語、スペイン語、フランス語、ドイツ語、オランダ語、イタリア語、ポルトガル語の9カ国語をサポートする。