<特集>ローカル5Gシステム徹底比較ローカル5Gの無線設計をDASでラクラク 分散型アンテナが効く2用途とは?

ローカル5G商用化の最大の関門は、無線エリア設計だ。敷地外への電波漏れを回避しつつ、狙った場所へ安定的に電波を届けるのは簡単ではない。分散型アンテナ(DAS)をどう使いこなすかが成否を分ける。

ローカル5Gのユーザー、そして5Gコア・基地局ベンダーも待ち望んだソリューションが間もなく市場投入される。「DAS」の略称で呼ばれる分散型アンテナシステム(Distributed Antenna System)だ。基地局のRU(Radio Unit)から出る信号を同軸または光ケーブルで複数のアンテナに分配することで、例えば遮蔽物の多い屋内環境で電波エリアを構築しやすくするのに使われる。

通信事業者ネットワークでは長らく利用されているこのDASが、いよいよローカル5Gでも使えるようになる。東芝インフラシステムズが8月にDASの販売を開始。12月に出荷予定だ。NTT東日本も10月5日に、同社の「ギガらく5G」と、基地局シェアリング事業を手掛けるJTOWERが提供するDASを接続すると発表した。

東芝インフラシステムズ 社会システム事業部 インフラサービス創造部 営業戦略担当課長の今井一博氏は「ユースケースに合わせて様々な基地局選択に対応する」と、マルチベンダーで展開することでローカル5Gの普及と用途拡大を進める考えだ。NEC 上席テクノロジー・エバンジェリストの藤本幸一郎氏も、「検証さえすれば接続には問題ないはず。特に東芝のDASはどんな基地局でも使えると思う。プロジェクトごとに(採用を)判断したい」と歓迎する。

無線安定化と低コストを両立

DASの目的は、無線環境の安定化だ。「ローカル5Gの商用化には、電波漏洩対策と安定稼働の両方が必須。そのための無線エリア設計・構築に費用と時間がかかっている。電波環境は常に変化するので、伝搬シミュレーションや測定、設計を何度も繰り返すことでコストが嵩んでいる」と今井氏。このコストを低減できなければ、ローカル5Gの本格普及は望めない。

どのような仕掛けで、DASは無線の安定化と構築・運用コストの低減を実現するのか。

DASは親機・中継機・子機で構成される。図表1の下段のようにRUの先につなげて、RUから出る電波を光ケーブル(東芝の場合)で子機のアンテナへと分配し、通信エリアを拡張する。ビル内なら、1棟にRUと親機を1台置き、フロアごとに設置する中継機を経由して、各フロアの子機へ分配するといった形だ。

図表1 DASを使用した場合の基地局構成の違い

図表1 DASを使用した場合の基地局構成の違い

メリットは主に3つ。1つは、RUから広範囲に電波を吹くよりも柔軟にエリアが設計できることだ。図表2の下段のように子機を分散配置して敷地外への電波漏洩を防いだり、遮蔽物を回避して細かくエリアを作ったりできる。屋外でも、他社土地への影響を最小限に抑えるのに役立つ(図表3)。

図表2 柔軟なエリア構築(1)

図表2 柔軟なエリア構築(1)

図表3 柔軟なエリア構築(2)

図表3 柔軟なエリア構築(2)

DASには、同軸ケーブルで単に信号を複数子機に分配するだけのものもあるが、東芝はエリア設計をしやすくするため「アクティブDAS」機能を搭載した。子機ごとに出力調整が可能で、子機間の干渉抑制や、自己土地外への電波漏洩を防ぐ。

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