空き会議室の貸し出しも
同社は、オフィスのスマート化を支援するサービスも展開している。「WorkOffice+(ワークオフィスプラス)」だ。
スマートビルアプリ「WorkOffice+」(出典:ソフトバンク)
例えば、テナント企業の従業員は、アプリから会議室の予約や利用状況を確認できる。また、入館受付の自動化も行える。ビルの入り口で来客用QRコードを読み取ることでドアの解錠ができるため、受付スタッフを配備したり、来客を迎える必要がなくなる。空調設備もアプリから操作可能だ。
ビルのオーナーにとっても、同サービス導入のメリットは大きい。リモートワークの普及により、貸し会議室やレンタルオフィスの需要が高まっているが、オーナーは空きの会議室を企業や一般のビジネスマンへ貸し出すことが可能だ。スマートロックの解錠権限をスマートフォンに付与することもできるので、強固なセキュリティ構築にも貢献する。
サンフロンティア不動産は、同社が管理するオフィスビル「+SHIFT NOGIZAKA(プラスシフトノギザカ)」に同サービスを導入。スマートロックや警備システムとの連携により、セキュアな環境づくりを実現した。
サンフロンティア不動産の「WorkOffice+」活用イメージ
中でも特筆すべき点は、ユーザーに伝えたい情報を直接伝える「コミュニケーション機能」だ。「ユーザーにアプリを通じて、ビル内のイベント情報や工事情報を掲示する。発信側は、その情報を『誰が見ていて誰が見ていないか』把握することができる。告知方法が悪かったのか、そもそも見られていなかったのかの分析にもつなげることができる」とソフトバンク 法人事業統括 デジタルトランスフォーメーション本部 スマートシティ事業統括部 スマートシティ事業推進2部 ストラクチャ―デザイン課 課長の伊佐隆志氏は胸を張る。
ソフトバンク 法人事業統括 デジタルトランス フォーメーション本部 スマートシティ事業統括部
スマートシティ事業推進2部 ストラクチャ―デザイン課 課長 伊佐隆志氏
「単純に『面積』を貸すだけだと、賃料相場が周りの土地単価とあわせて『面積が多いか少ないか』『築古なのか新しいのか』の掛け算にしかならない。色々なサービス付与やスマート化の要素をビルの中にスペックインさせていくことが重要だ」と伊佐氏は語る。
LINEなどのアセットも活用
ソフトバンクが保有するアセットも有効活用する。竹芝エリアでは、ランチタイムなどのピーク時にビルが混雑すると、浜松町エリアへ食事に向かう人も多いが、「竹芝を盛り上げていくために、異なるオーナーが管理する隣のビル内の飲食店のクーポンを、LINEに通知するといった取り組みも行われている」(沼田氏)。
こう述べたうえで、「大型ビルのスマート化が我々の案件としては多いので、小型ビルも含め、病院や学校などの違うジャンルの建物にもスマート化を広げていきたい」と意気込む。
ソフトバンクは、“知能”を持ったビルの自律運営を目指す「Autonomous Building(オートノマスビルディング)」というコンセプトを掲げる。例えば、ビル内の設備異常や災害などにビル自身が気付き、対応するというのが同社の目指す姿だ。あらゆるデータが連携し、ビルが“自律”していくことで、混雑緩和や業務効率化、エネルギーの最適化など、様々な課題が解決されていくだろう。