ソフトバンクの“もう1つ”のAI子会社 「業界特化型AI」で新市場開拓

ソフトバンクは生成AIを開発する子会社「SB Intuitions」を今年8月に設立したが、ソフトバンクのAI子会社としては6年前に始動したFindability Sciences社もある。AIを活用した分析や予測サービスなどを提供する同社は、これまで培ってきたAI技術を活かし、製薬業界と監査領域向けのAIソリューション開発に着手する。

「ソフトバンクは生成AIに死ぬほどポジティブだ」。2023年5月に行われた決算説明会の中で、ソフトバンクの宮川潤一社長はこう発言した。

同社は、社内での生成AI活用にも積極的だ。社内向けAIサービス「ソフトバンク版AIチャット」を全従業員2万人を対象に、2023年5月より提供開始した。営業・マーケティング領域の企画・アイデアの立案やサービス開発におけるプログラミングのサポート、コールセンター業務など、あらゆる業務に応用することを目指すという。また、同年7月には大規模な計算基盤の構築を発表し、生成AIの開発を行う国内企業や研究機関などが利用できる予定だ。

そんな生成AIの登場以前に、ソフトバンクがいち早く目を付けたのが、「分析・予測AI」だ。同社は2017年9月、AIによる予測分析サービスを開発する米Findability Sciences Inc.(ファインダビリティ・サイエンシス・インク)と合弁会社「Findability Sciences株式会社」を設立した。「ソフトバンクは法人に強く、法人事業部門には数千人の人員がいる。この“販路”とFindability Sciences Inc.のAI技術のベストコンビネーションで、日本市場の開拓を目指した」と、Findability Sciences 代表取締役社長兼CEOの小齊平康子氏は、設立の背景を語る。

「ここ数年で黒字化」

ただ設立からの6年間は、決して楽な道のりではなかったという。「当時はAI分析の使いどころが顧客の現場でイメージされにくかった。画像認証や顔認証も出てきていない時代で、『AIを仕事に活かすためにはどうすればいいんだろう』という初期のフェーズから考える必要があった」と小齊平氏は振り返る。

AIへのニーズを大きく変化させたのはコロナだった。コロナで出勤制限がかかる中でも従来通りの効率とクオリティを維持しながら業務を回していくのにAIを活用したい、熟練者の定年退職に備えて熟練者が保有する技術をAIに置き換えたいといったニーズを掴み、「ここ数年で黒字化を達成した」と小齊平氏は胸を張る。

ChatGPTの登場により、生成AIに関する要望も「数百件頂戴している」という。コールセンター業務や翻訳、プレスリリースの自動作成などへの活用を検討する企業が多いが、生成AIで「どんなことができるか」の検証段階で、中長期戦略に盛り込めるほどのAI 戦略を見据える企業はごくわずかとのことだ。

同社の主力製品は、自動予測プラットフォーム「Findability Platform」である(図表1)。この製品の特徴は、“オートモデリング”だ。「一般的な機械学習による予測分析ツールは、データを入れ込むと、数十の予測分析結果を提示してくれるが、その中から最良のモデルを人が選ばないといけない。Findability Platformは、ベストなモデルを自動でピックアップしてくれるため、精度の高いモデルをより迅速に業務に適用することができる」(図表2)と、小齊平氏は同製品の強みをアピールする。出荷数量や来店客数の推測といった需要予測に活用されているという。顧客行動予測にも使われており、「特に解約や貸倒は企業への財務インパクトが大きいため、需要が高い」(小齊平氏)。

図表1 Findability Platformの概要

 図表1 Findability Platformの概要

図表2 Findability Platformの特徴

図表2 Findability Platformの特徴

アジャイルな伴走型支援も売りだ。「AI活用を成功させるうえでは、企業がやりたいことに対して『どんなデータを用意し、どんな予測をしていくか』という業務設計が肝になる。これにはAIへの理解度や経験値が必要なので、予測内容の検討やデータの準備もお手伝いしている」と小齊平氏は話す。

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