<連載>ChatGPT時代の通信ネットワーク(第5回)PwCが考える通信事業者の生成AI活用術「攻めと守りのAIビジネスを」

2023年4月より、生成AIに特化したコンサルサービスの提供を開始したPwC Japanグループ。通信事業者は、ユースケース開発といった“攻め”だけでなく、リスク管理などの“守り”も重視すべきだと強調する。

――日本の通信事業者は、生成AIをどのように活用していくべきでしょうか。

小林 AIのアウトプット精度が高まっていく中で、想定される活用ケースは主に3つあると考えています。1つ目は、ネットワークパフォーマンスの最適化です。ネットワークインフラから抽出可能なログデータや異常検知データを分析し、インフラに発生した、あるいは発生しうる問題をスピーディーに特定できるようにするためのインサイトを蓄積していくことが重要です。例えば、ネットワーク機器の故障や混雑状況といった問題のパターンを自動的に識別し、解決方法の提示が可能になります。通信事業者は故障や混雑の発生に先立って施策を講じることができるので、ネットワーク全体の信頼性向上に寄与できると思います。

ログデータに加え、ソーシャルメディアの情報や気象データなどを生成AIで分析し、需要予測に活用することで、ネットワークの容量を増やすべき地域をリアルタイムで特定することも可能になります。インフラの整備計画や運用コストの最適化に活用できるのではないでしょうか。

PwCコンサルティング ディレクター 小林峰司氏

PwCコンサルティング ディレクター 小林峰司氏

2つ目は、カスタマーエクスペリエンス(CX)の向上です。顧客満足度(CS)向上を目的としたチャットボットやバーチャルアシスタント(VA)など、AIを活用したソリューションがすでに展開されていますが、生成AIによってさらなる精度向上が見込まれており、パーソナライズドマーケティングにも活用できると考えています。お客様の行動や好みに合わせてカスタマイズしたキャンペーンを作ったり、VAも今まで以上に効率的な顧客サービスになるでしょう。今までの「お問い合わせ内容をオペレーターにお伝えします」「このヘルプページをご覧ください」といったレベルの応答から2歩3歩進んだ世界を実現できます。CS向上にもリンクしますし、サービス担当者の負担軽減も期待できます。

プレディクティブ(予測)マーケティングへの活用も進んでいくでしょう。エンドユーザーの嗜好に関するデータを分析することで、将来の潜在顧客を予測し、その顧客に対してパーソナライズ化された価値提供を行えるため、ロイヤリティ向上にも期待できます。

3つ目は、不正検知・防止といったセキュリティ対策です。生成AIでネットワークへの不正アクセスやプロファイルの改竄などが検知可能になってくるのではないかと思っています。1つ目で少し述べたように、データを分析して不正行為のパターンをリアルタイムに特定し、NOC(Network Operation Center)やSOC(Security Operation Center)に対して警告を発し、措置を講じることもできます。それによって、ネットワークとして完全性(Integrity:情報セキュリティ3要素の1つ)を保つのに役立つと考えます。

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