SPECIAL TOPIC通信事業者に真のゼロタッチオペレーションを OSSに求められる8つのKPIとは?

より付加価値の高いサービスをより迅速に、より低コストで提供する――。通信事業者は常にそんな「無理難題」にさらされ続けてきた。模索を続ける通信事業者がある一方、海外ではいち早く開通から運用までの処理を連携させて真の自動化、真のゼロタッチオペレーションを実現し、ビジネス上のさまざまな目標を達成しつつある通信事業者も登場している。

通信事業者のCTO、CIO、CFOが達成すべきKPIと運用自動化

一方で通信事業全体を見渡す立場にあるCTOやCIO、あるいは投資対効果に責任を持つCFOは、ビジネス面とオペレーション面の両方でより厳しい評価の目にさらされ、KPIの達成を迫られている。

具体的には、(1)運用に当たる人員の生産性向上や(2)ネットワークを構成する設備・資産の効率利用、(3)プロセスの自動化と、(4)それによる顧客体験の向上だ。たびたび言われているように、顧客から故障申告を受けてはじめて対応に動くのではなく、影響が顕在化する前にいかに対応していくかがビジネス面で問われている。

またオペレーション面では、(5)サービス利用のオーダーを受けてからサービスが利用可能になるまでの時間をいかに短縮できるかに始まり、(6)Time-to-Market 、つまり新規サービスを市場に投入するまでの期間短縮、(7)障害復旧の迅速化や(8)リモートオペレーションを駆使しての現地作業の回避といった事柄が要求される。

これまで、キャリアネットワークの運用を支えるOSS(Operation Support System)はもっぱらコスト削減の面からのみ評価され、「新たな収益を生み、顧客満足度を高めるためのシステム」とは見なされてこなかった。しかし今やOSSは「これら8つのKPIをどれくらい向上できるかが問われています」と山本氏は言う。

(左から)日本ヒューレット・パッカード コミュニケーションテクノロジー事業本部 テクニカルプリセールス本部 シニアコンサルタントの山本幸治氏、降旗康敬氏、同事業本部 テクニカルプリセールス本部の安立寛氏

(左から)ヒューレット・パッカード エンタープライズ コミュニケーションテクノロジー事業本部
テクニカルプリセールス本部の山本幸治氏、降旗康敬氏、安立寛氏

インテントベース・モデリングやAI/MLの活用が鍵に

5つの阻害要因を乗り越え、多くのKPIを達成する鍵として、サービス開通処理時のオーケストレーションとサービス開通後のアシュアランスを別々に最適化するのではなく1つのクローズドループとして統合し、全体最適化された自動化を実現することがこれからのOSSには求められるという。この実現を支える技術が「インテント」をベースとしたオーケストレーションと、AI/MLを活用したプロアクティブ・プレディクティブな監視だ。

「従来の自動化は、制御ロジックごとにワークフローを記述する方法で行われてきました。しかし通信事業者が提供するサービスが複雑化するにつれ、ワークフローの記述に時間やコストがかかり、コストを削減しながら自動化を推進したいというニーズと相反する部分が生じてきました」(同事業本部 テクニカルプリセールス本部 コンサルタントの安立寛氏)

より簡単に自動化を実現する手法として提唱しているのが、インテントベース・モデリングだ。サービスと、サービスを構成するリソースをモデルとして定義し、さらにサービスを提供する上で必要な状態遷移モデルを組み込むことで、「どのようなサービスを実現するか」を抽象化して表現する。そしてサービス申し込みがあった際には制御ロジックが動的に自動生成される仕組みだ。

「開発者が個々の制御ロジックを考える必要はなくなり、『どういったサービスをどのような構成で提供するか』という部分に注力できる新しいアプローチです」(安立氏)。接続サービスにファイアウォール機能を追加し、さらに優先制御も追加していくといった具合に柔軟にサービスを拡張したり、5Gの新しい仕様に対応した新しいサービスをより素早く、短期間で市場に投入していくことができる。

図表1 インテントベース・モデリングの例

一方監視では、すでにAI/MLを活用し、障害を事前に検知し、問題が顕在化する前に修復するAIOpsが注目されている。このとき、前述のインテント・ベースモデリングに基づいて定義されたサービスリソースの設定を連携させることが、エンドツーエンドの自動化における重要なポイントになるとした。「オーケストレーションで作成したサービスの情報をその場で監視側に渡し、開通直後からすぐにメトリックスを収集し、サービスの傾向分析・問題分析を自動で実施。障害や性能劣化の検知を契機にオーケストレーターにサービス再開通を指示するといった連携を実現することができます」(山本氏)

また前述の通りネットワークは、専用アプライアンス機器から、マルチベンダーの汎用サーバーと仮想化基盤、ネットワークアプリケーションの組み合わせで実現される形に変わりつつある。このNetwork Function Disaggregationによって、ベンダー選定の柔軟性や調達コストの削減が期待できることは確かだが、半面、運用管理の煩雑さが増している。この環境において、共通のオープンなインターフェイスを介して運用できるようにしていくことが、運用の自動化には不可欠だ。O-RANの領域でもこの流れはますます重要になるという。

もう1つ見落とせないポイントが、正確なインベントリ情報の収集・維持だ。「サービス開通時にも、何らかの障害対応やメンテナンス作業時にも、正確な構成情報は不可欠です。仮想化が進むなか、ネットワークの状態は常に変化していきますが、それに対応するためにネットワークの構成情報や設定情報を自動的に取得し、最新の状態を維持する仕組みが重要になります」(同事業本部 テクニカルプリセールス本部 コンサルタントの降旗康敬氏)

最後に欠かせないのが高可用性だ。ネットワーク自体の高可用性はもちろん、それを管理するOSSにも高い可用性が求められる。「1つのロケーション内での冗長化に加え、自然災害などに備え、別のサイトに同一機能を持たせることも求められています。また、OSS自体のアップグレードにおいても運用機能を継続しながらアップグレードを行うIn-Service Software Upgradeが求められています」(安立氏)。

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