<特集>空と海の通信戦争日本周回ケーブルが秘める可能性 アジア・米間のデータハブに

ミッシングリンクの日本海ルートを作る──。デジタルインフラ強靭化を目的に、岸田政権が完成を目指す日本周回ケーブル。今年4月の“改訂版”整備計画で示された次の目的とは。

デジタル田園都市国家構想の下、5G整備の推進やデータセンター(DC)の地方分散化などを柱にスタートしたデジタル田園都市国家インフラ整備計画。その目玉の1つが「デジタル田園都市スーパーハイウェイ」だ。日本を周回する海底ケーブルを整備することで、日本のデジタルインフラ強靭化を図ることが目的だ。

日本は世界最高レベルの光ファイバーネットワークが整備されており、この陸上網と複数の海底ケーブルが日本列島をつないでいる。ただし、海底ケーブルは太平洋側に偏在している。総務省 総合通信基盤局 電気通信事業部 データ通信課 インターネットドメイン利用推進官の関裕介氏によれば、「秋田から九州がミッシングリンク。現在、稼働しているものがない」状況だ。ここに日本海ケーブル(図表1の赤い点線)を新設し、日本周回ケーブルを実現しようとしている。

図表1 データセンター/海底ケーブルの整備イメージ

  図表1 データセンター/海底ケーブルの整備イメージ

列島をつなぐ“第3ルート”

念頭にあるのは、今後想定される大震災への備えだ。東日本大震災では陸上網も太平洋側の海底ケーブルも傷つき、国内・国際通信の維持が困難になった。同じような事態に陥っても、ループ構造の日本周回ケーブルがあれば断線箇所を避けて逆回りでトラフィックを流せる。

トラフィック需要が太平洋側に偏り、国際海底ケーブルの陸揚げ拠点も房総半島と志摩半島に集中しているため、市場原理に任せていては日本海ルートの実現は難しい。そこで、令和3年度補正予算で500億円の基金を設立。地方DC拠点の整備と並行して、太平洋側と陸上網に並ぶ“第3ルート”の構築を進める。

現時点では冗長化が主目的だが、将来的にはDC拠点の分散と連動して地方活性化を下支えするインフラにもなり得る。「地方のデジタル実装が進み、各地域でデータが生み出されるようになれば、日本海側のトラフィックも増える可能性がある」と関氏。DC分散化については2022年6月に7拠点(図表1)を採択しており、現在、日本海ケーブルを敷設する事業者の公募に向けて準備を進めているところだ。

総務省 総合通信基盤局 電気通信事業部 データ通信課 インターネットドメイン利用推進官 関裕介氏

総務省 総合通信基盤局 電気通信事業部 データ通信課 インターネットドメイン利用推進官 関裕介氏

日本海ケーブルには、事業者からの提案に基づいて数カ所の分岐点を設ける計画で、分岐提案に応じて日本海側の陸揚げ局も整備する。

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