全世界で300万以上の企業が利用しているというGoogle Apps。今も毎日3000社以上の企業がGoogle Appsへ移行しているというが、こうした状況は日本でも同様だ。「前回来日したときから、日本のユーザー数は50%も伸びている」。7月20日に開催されたイベント「Google Enterprise Day」で、米Google エンタープライズ グローバルセールス&ビジネスデベロプメント担当副社長のアミット・シング氏はこう胸を張った。
Google Appsへの移行を決めた国内企業では、何が採用の決め手となったのだろうか――。Google Enterprise Dayでは、戸田建設、頓知ドット、ノーリツのGoogle Apps導入企業3社によるパネルディスカッションが行われた。
(左から)モデレータの明治大学大学院グローバル・ビジネス研究科教授でリクルート ワークス研究所 特任研究顧問の野田稔氏、パネリストの戸田建設 建築企画部 企画3課 / 総合企画室 情報管理課 佐藤康樹氏、頓智ドット CTO 近藤純司氏、ノーリツ IT推進統括部 IT推進部 情報管理グループ 長尾謙一郎氏 |
戸田建設はBCP対応がGoogle Appsの採用理由
戸田建設がGoogle Appsを導入する発端となったのは、ある現場事務所の全焼事件だった。今年2月、放火により全焼し、すべてが失われてしまったのだ。特に困ったのは施工中の写真だったという。「行政と折衝したり、社内でも結構な問題となった」(戸田建設の佐藤康樹氏)。
この全焼事件をきっかけに、戸田建設の社内ではBCP(事業継続計画)強化に向けた検討がスタート。佐藤氏はGoogle Appsへの移行を考えていたというが、「社内をどう説得しようかと悩んでいたときに、3.11が来た」。戸田建設では石巻市の現場事務所が津波で流される被害に遭い、同様にすべてのものを失ったほか、福島第一原発付近の現場事務所への立ち入りが不可能になった。これで「ますますサテライトに大事なデータを置いておくのは駄目だ」と確信したという。
津波に遭った石巻市の事務所。もともとあった場所とはだいぶ離れたところで、建物は発見されたという |
さらにその後、それまでメールサーバーを預けていたデータセンター事業者から、データセンターの設置場所を神奈川県から静岡県に移転するという通知が来る。場所を調べると、海岸沿いかつ東海地震の震源域、しかも浜岡原発からも近いことが分かった。「すべての話を総合して、『もう日本にデータセンターはなくてもいいだろう』と。グーグルは、プレートレベルで安全な場所を選んでデータセンターを作っている」とメール環境などをGoogle Appsへ移行することを決めた。