韓国モバイルビジネス動向ウォッチ[第9回]NFCで始まった金融と通信事業者の覇権争い(中)――中国と韓国の最新動向

モバイル先進国、韓国をウォッチしながら、新しいモバイル関連ビジネスの種を見つけていく本連載。前回に続き、日本での注目も高まる「NFC」をめぐる覇権争いに迫る。

NFCスマホの販売台数は初年度5000万台

中国銀聯のNFCプロジェクトでは、HTC製のAndroidスマートフォンが使われている。この2社に、microSDメーカーであるIncomm社、アプリケーション開発を担当したWatch Data社が加わった4社の共同プロジェクトとしてトライアルは実施されている。

microSDを使用したNFCモバイル決済を実現するうえで、技術面での課題となったのは、スマートフォン内のアンテナとmicroSD内のNFCチップをいかにして接続するかだったという。この課題については、microSD V2.0で追加された2つの補助ピンにSWP(Single Wired Protocol)を割り当て、直接スマートフォンの内蔵アンテナに接続することで技術的な解決を得た。

HTCはmicroSD/NFC対応スマートフォンの中国国内での販売台数について、初年度5000万台と予測している。中国銀聯のNFCスマートフォンを持った日本への旅行者が増加してくれば、日本側でも対応が必要になってくるであろう。

中国では通信業界よりも金融業界の政治力のほうが強く、本来であれば携帯電話事業者側でリードしてもいいような交通系、ポイントカード管理、店舗での購買などのNFCサービスについても金融業界主導で計画が進んでいる。さらに、カードによる決済業務は銀行の専任業務とし、携帯電話事業者による非接触型プリペイドカードやポストペイドカードを使った店舗決済業務への参入を禁止する法律まで立法し、携帯電話事業者を牽制している。

橋本清治(はしもと・せいじ)

IT業界での30年の経験を生かし、某外資系通信機器ベンダー勤務の傍ら、エムアンドエムリサーチを運営。主に海外の通信事情リサーチやベンダーの日本進出の支援を行う。現在は特に韓国のモバイル通信事情を注視している。表面的な事実の調査だけでなく、必要があれば現地調査も行う行動派リサーチャ。“真実は体で確かめる”が身上。コンタクトはinfo@mmrjp.comまで

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