シャープ大畠本部長に聞いたケータイの将来

携帯電話3キャリアに端末を供給し、国内シェア1位のシャープ。市場が飽和するなか、Android端末やLTE端末、さらにはIT製品の通信対応なども視野に入れている。執行役員通信システム事業本部長の大畠昌巳氏に携帯電話事業戦略を聞いた。

LTEで携帯のクラウド化が加速

――2010年後半にはドコモがデータ通信分野でLTEサービスを開始します。どの時点でLTE端末を発売するのですか。

大畠 LTEは当初データ通信からスタートされますが、当社がLTEに対応する端末を投入するタイミングは未定です。データ通信専用になるのか、スマートフォンになるのか、高機能端末になるのかもこれからです。

LTEで通信速度が高速化すると、ちょっとしたサービスでも通信キャリアのサーバーで管理するようになり、携帯電話のクラウド化が今よりさらに加速すると予想しています。そうなったときに、携帯電話は入出力装置としての重要性が高まっていきます。クラウド化に適した入力装置としてはカメラやタッチパネル、センサー、出力装置としては液晶があります。それらのデバイスを当社は内製できることが、LTEでは強みになります。

――LTEは国内3キャリアとも採用を予定しています。共通化することで端末作りにおいて変化はあるのでしょうか。

大畠 現在、ドコモの「オートGPS」やソフトバンクのWi-Fiのように、キャリアごとに注力するサービスが異なっています。LTEで3キャリアの通信方式が共通になってもこの状況は変わらず、個々に特色のあるサービスを出していくと思うので、個別に対応していきます。それでも、ベースとなる通信方式が一緒になることで、端末メーカーとしての負担は軽くなります。

――2010年の携帯電話市場は09年よりやや上向くとの見通しを立てられていますが、具体的にはどのような需要がありますか。

大畠 まず、最も加入者のいるドコモが2年間の継続利用を条件とする料金プランを開始してから丸2年が経過し、買い替えの時期を迎えることが大きいと見ています。

もう1つはスマートフォンに代表される2台目需要です。いつまでもiPhoneの独壇場というわけにはいかないので、他社からもよい端末が出てくるでしょう。

加えて、デジタルフォトフレームのように従来の電話機とは異なる新規市場が期待できます。当社でもコードレス電話やFAXの他にデジタルフォトフレームとしても利用できる「インテリアホン」を提供しています。また、モバイルインターネットツール「ネットウォーカー」や電子辞書などのIT商品も手がけていますが、それらに通信機能が搭載されるようになれば面白い市場になるし、当社もぜひ参入しなければなりません。市場調査をしながら可能性を模索しているところです。

さらに、2011年以降はLTE端末が登場します。過渡期には現行の端末に上乗せされる形になるので、市場にはプラスになると見ています。
景気動向にもよりますが、こうしたいろいろな流れが出てきていることから、09年が底ならこれ以上落ちることはなく、あとは上がっていくしかないと考えています。

月刊テレコミュニケーション2010年1月号から転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

大畠昌巳 (おおばたけ・まさみ)氏

1955年12月18日生まれ。78年3月広島大学工学部卒業。同年4月シャープ入社。2003年2月通信システム事業本部 パーソナル通信第一事業部 事業部長。04年10月通信システム事業本部副本部長兼パーソナル通信第一事業部事業部長。06年4月情報通信事業本部本部長。08年9月海外営業本部 副本部長兼SESC(夏普商貿)情報通信分社総経理。09年4月通信システム事業本部執行役員本部長、現在に至る

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