シャープ大畠本部長に聞いたケータイの将来

携帯電話3キャリアに端末を供給し、国内シェア1位のシャープ。市場が飽和するなか、Android端末やLTE端末、さらにはIT製品の通信対応なども視野に入れている。執行役員通信システム事業本部長の大畠昌巳氏に携帯電話事業戦略を聞いた。

――他の端末メーカーから見ると、シャープは「商品化が上手くて早い」そうです。以前、松本雅史副社長はシャープの商品作りの特徴を「半歩先を行く」と表現されていました。シャープの強さの源泉はどこにあるのですか。

大畠 当社の創業者である早川徳次は、「他社がまねをするような商品を作れ」と言っていました。他社にないものを先に出すことが、シャープのものづくりにおけるDNAといえます。しかし過去には先を行き過ぎて時代が追いつかず、失敗した商品もあったので、「一歩先」ではなく「半歩先」と言っています。

携帯電話に関しても、他社が800万画素のときに1000万画素に対応したり、他社がCMOSカメラのときに、より画質の美しいCCDカメラを搭載するなど、ちょっとずつ先を行くようにしています。こうしたことができるのは、社内にデバイス部門があり、新しいデバイスをいち早く採用できるからです。

当社は携帯電話では後発なので、他社と同じことをしていたのでは勝てません。この認識はいまだに変わっておらず、社員全員が危機感を持っているし、プライドもあるので、「リスクがあるからやめよう」と言う人はいません。そこが他社と違うところではないかと思います。

新しいエコシステムに貢献

――先日の「携帯電話事業説明会」では、今後の動向としてスマートフォンの急速な台頭を指摘されていました。

大畠 通常の音声端末はこれからも続いていきますが、市場が飽和している中で、次の大きな動きがあるとにらんでいます。

もともとスマートフォン的な端末は日本にもあり、アーリーアダプター層には受け入れられてそれなりにヒットしても、「一皮むける」ところまでは行きませんでした。

ところがiPhoneはアップルのブランド力もあるのでしょうが、一般ユーザー層にまで裾野を広げています。ユーザーはiPhoneによってスマートフォンの楽しさを認識し始めていることから、iPhoneをきっかけに国内でもスマートフォン市場が盛り上がる可能性は十分にあると期待しています。

――iPhoneの登場を契機に、通信キャリアに依存しないアプリストアなど新たなビジネスモデルが生まれています。端末メーカーの立場からどのように見ていますか。

大畠 iPhoneのようにアプリケーション市場が拡大すると、端末メーカーは、端末とアプリの両方で訴求することができます。端末とソフトウェアが充実すると新たなユーザーの獲得につながり、メーカーは端末の売上だけでなく、アプリの売上も確保できるようになります。

日本は通信キャリア主導のビジネスモデルなので、どこまでできるかはわかりませんが、この新しいエコシステムの中で当社も貢献できることがあるのではないかと考えています。

――スマートフォン市場の拡大をにらみ、Android OSを搭載した端末を2010年春に投入する計画ですが、具体的にどのような端末になるのですか。

大畠 すでにAndroid端末の開発に入っていますが、どのようなものになるかはノーコメントです。

ただ、我々日本メーカーがスマートフォンを手がけるとなると、通信キャリアのサービスにも対応した端末でなければヒットしないだろうし、そこがミソになるだろうと思っています。

――つまり、国内市場に合ったAndroid端末になるわけですね。

大畠 海外では通信キャリアに関係のないオープンなサービスがすんなり受け入れられます。これに対し、日本は通信キャリアの独自サービスの歴史があるので、それに対応していない端末はユーザーにとって使いづらいのではないでしょうか。

月刊テレコミュニケーション2010年1月号から転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

大畠昌巳 (おおばたけ・まさみ)氏

1955年12月18日生まれ。78年3月広島大学工学部卒業。同年4月シャープ入社。2003年2月通信システム事業本部 パーソナル通信第一事業部 事業部長。04年10月通信システム事業本部副本部長兼パーソナル通信第一事業部事業部長。06年4月情報通信事業本部本部長。08年9月海外営業本部 副本部長兼SESC(夏普商貿)情報通信分社総経理。09年4月通信システム事業本部執行役員本部長、現在に至る

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