「Appleがミッドレンジスマホを2012年までに投入の可能性」――著名アナリストが分析するスマホ/タブレット市場

モバイル業界の著名アナリスト、Richard Windsor氏が英ロンドンで開催された「Open Mobile Summit 2011」で講演した。同氏によれば、Appleはミドルレンジのスマートフォンを2012年までに投入する可能性があるという。また、タブレット市場の収益性は今後大きく圧迫されるのと見方を披露した。

野村証券の英国支社でグローバル技術マーケティングのアナリストを務めるRichard Windsor氏は、モバイル業界で著名なアナリストの1人だ。2001年から現職で業界を見ており、フィンランドNokia、米Apple、米Googleなどデバイス側、プラットフォーム側、サービス側と広い視点からの鋭い分析力に定評がある。氏の見解は英Financial TimesやReutersなどによく引用されている。

6月9日、英ロンドンで開催された「Open Mobile Summit 2011」でWindsor氏は、スマートフォンとタブレットのトレンドについて分析を披露した。ここでは、1)ミッドレンジとApple、2)タブレットのコモディティ化の2つを中心に、Windsor氏の見解をまとめる。

「Appleの収益性は高すぎる。この状況は長く続かない」

「端末市場の価値はスマートフォンにシフトした」とWindsor氏は言う。長い間Nokiaが独占してきた世界の携帯電話市場だが、スマートフォンによりゲームが変わった。

2011年第1四半期のNokiaとAppleの出荷台数、売上、利払い前の税引前当期利益を比較すると、出荷台数はNokiaが1億900万台、Appleが1860万台とNokiaが5~6倍であるのに対し、売上高はAppleが122億8000万ドル、Nokiaは102億9000万ドル、利払い前の税引前当期利益はAppleが4300万ドル、Nokiaは1010万ドル、とAppleの収益性の高さがずば抜けていることがわかる。

AppleとNokiaの比較
AppleとNokiaの比較

そうした上で、Windsor氏はスマートフォンが中心となった携帯電話市場で収益を上げるには、「ユーザーが使いたくなるようなソフトウェアと利便性を強化するツール、それにソフトウェアの投資に見合った価値を引き出すハードウェア――この2つが重要だ」と言う。AppleのiPhoneはそれを体現した成功例となる。

ベンダーの勢力を地域別にみると、300ドル以上のスマートフォンは北米、西ヨーロッパ、アジアで1機種で勝負するAppleが売上高ベースで約50%のシェアを持つ。Nokiaは東ヨーロッパと中東市場で何とかリーダーの座を維持しており、南米ではAndroidが猛攻している。300ドル以下になると、Androidベンダーの独壇場だ。ローエンドのスマートフォンではSymbianのNokiaとAndroidがせめぎあっている。

世界のスマートフォンベンダーのポジショニング
世界のスマートフォンベンダーのポジショニング

先進国の市場を欲しいままにしてきたAppleだが課題もある。500ドル程度をスマートフォンに支払う層には一巡しており、今後は北米・西欧州からアジア市場、ハイエンドからミッドレンジの2つがけん引役になると見る。「Appleの収益性は高すぎる。この状況は長く続かない」とWindsor氏。

300ドル以下のスマートフォンはAndroidベンダーがほとんど独占している。この市場は2010年、23%増で成長しており、2011年の成長率は28%増、2013年は38%増を見込むという。地理的には日本を除くアジアからの強い需要が市場に影響を与え、ここでもミッドレンジとハイエンドはAndroidとAppleが主流になると予想する。数あるAndroidベンダーの中でもアジア系が優勢で、MotorolaとSony Ericssonについては「不安」と述べた。また、中国などアジアでプレゼンスの高いNokiaにもチャンスがあるとした。

300ドル以下のミッドレンジ端末が売上に占める比率は今後拡大する
300ドル以下のミッドレンジ端末が売上に占める比率は今後拡大する

このようなトレンドを受け、Appleが成長を続けるにはアジア市場にもアピールするミッドレンジが必要、とWindsor氏は見ており、「Appleが2012年までに、ミッドレンジのスマートフォンを投入する可能性がある」と述べた。今後について、Windsor氏は、Androidを担ぐ台湾HTC、中国ZTE、韓国LG、韓国Samsungなどのアジア勢が優勢で、Nokiaの劣勢が続くと予想するが、Appleがミッドレンジ向けスマートフォンをそろえると、Androidの競争も大きく変わることになると見る。

一方で、Androidにも課題がある。バージョンがばらばらの端末が混在することでアプリケーションの互換性が損なわれる分断化、セキュリティの2点をWindsor氏は課題に挙げた。

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