NECは2023年3月3日、ローカル5Gの通信性能低下の原因をAIで特定し迅速な対応を可能とする、学習型無線品質分析技術を開発したと発表した。合わせて、同社の玉川事業所(川崎市)内に設置したローカル5G環境で、この技術の実証を開始したことも明らかにした。
ローカル5Gを導入した工場などの現場では、ロボットの作業速度や継続性などのアプリケーションの性能が生産性に大きく影響するため、通信性能要件を通信セッション単位で守ることが求められる。しかし実際には、レイアウト変更や機器・モノ・ヒトの移動などにより無線品質が変動し通信性能が低下することがあり、その原因の特定や分析には膨大な時間と労力を要する。このため、原因を自動特定する技術が求められていた。
今回NECが開発した学習型無線品質分析技術は、ローカル5Gの通信性能が低下している場所を、電波の受信電力など限られた無線品質のデータからAIでリアルタイムに推定し可視化するという。また、通信性能低下の原因を、無線品質の変動特性を基にAIを用いて通信セッション単位でリアルタイムかつ自動的に特定可能としている。
学習型無線品質分析技術を用いた無線品質推定システムのGUIイメージ
実験システムの構成
こうして推定・特定した結果を基に、基地局の送信電力、アンテナの向きやチルト角などを調整し、アプリケーションを安定して高い性能で継続可能とすることにより、現場業務の稼働率や生産性を大幅に向上させることができるという。
玉川事業場では、リビングラボ(日常の生活空間の中で研究開発を行う場所またはその活動)の手法による実証では、NEC社員が実際にローカル5Gを活用したアプリケーションを利用することを通じて、無線品質の変動の影響や通信性能が低下した際の原因の分析と対処に関するノウハウを得るという。今後はこれらをローカル5Gサービスに組み込み、実環境で効果を発揮するサービスに発展させることを目指す。
なお、この技術はネットワーク運用についての国際会議であるThe 23rd Asia-Pacific Network Operations and Management Symposium(APNOMS2022)においてBest Paper Awardを受賞している。