「以前はパブリッククラウドを買いたいという国内企業が多かったが、最近はプライベートクラウドを構築して親会社に提供したいという大企業のIT子会社が増えている。グローバルでは70%の企業がパブリックではなくプライベートクラウドを検討しているが、国内でも同様の傾向になってきた」。そう話すのは、日本ヒューレット・パッカード・テクノロジーサービス統括本部ソリューションサービス本部DCTソリューション部長の内田恵氏だ。
今、ICT市場で最大のキーワードとなっているクラウド。通信市場も当然この潮流と無縁でないが、そうしたなか成長が期待されているのがプライベートクラウドを支える次世代データーセンター構築ビジネスである。プライベートクラウドとは、企業(あるいは企業グループ)が作る自社向けのクラウドのこと。グーグルなどが提供するSaaSやPaaS、IaaSはパブリッククラウドと呼ばれる。
次世代データセンター技術の筆頭はサーバー仮想化だが、ネットワークの最適化も欠かすことはできない。そこで新しいネットワーク技術が登場してきているが、なかでも注目度が高いのがFCoE/DCBだ。
FCoE(Fibre Channel over Ethernet)は、SAN(Storage Area Network)用のプロトコルであるFCをイーサネット上で動かすための規格。正確には高信頼・ロスレス・低遅延の拡張イーサネット、DCB(Data Center Bridging)上で動作する。
課題はまだ高いコスト
FCoE/DCBの利点は、データセンターが現在抱える課題の解決策となることだ(下の図表)。まずはサーバーマシンのインターフェースカードの集約。従来はLAN用のNICとSAN用のHBAがそれぞれ必要で、冗長化用も入れると合計4枚になった。しかしFCoEなら冗長化用も含めて2枚のCNA(Converged Network Adapter)で済み、機器コストと電力コストを削減できる。また、ケーブリングも簡素化されるため、ケーブル代の削減や冷却効率の向上が図れるほか、ネットワークがシンプルになることで運用管理もしやすくなる。
図表 FCoE/DCBのメリット |
では、FCoE/DCBの普及はいつ始まるのか。コストがまだ高く、安定性の検証なども今からのため、「2010年にFCoEを採用するのが適切かというとちょっと難しい」とIDC Japanマーケットアナリストの草野賢一氏は指摘する。だが、これらの問題は時間と共に解消されていき、「FCoEの本格普及が始まるのは、米国では2011年。日本でもそれほど遅れない」とブロケード コミュニケーションズ システムズ・ソリューション マーケティング・シニアプリンシパルエンジニアの小宮崇博氏は見る。その頃には、プライベートクラウドの構築ビジネス自体も、大きく開花し始めているにちがいない。